ABSTRACT 1863(P7-8)
ヒト膵癌細胞株PSN-1の浸潤能に対するinterleukin-6の関与:井出澤剛直, 草間俊行, 藤井秀樹, 松本由朗 (山梨医大・一外)
Interleukin-6 and invasive ability of human pancreatic cancer cell line PSN-1: Takenao IDEZAWA, Toshiyuki KUSAMA, Hideki FUJII, Yoshiro MATSUMOTO (1st Dept. of Surg., Yamanashi Medical Univ.)
【目的】Interleukin-6(IL-6)の腫瘍細胞への浸潤・転移に対する効果については、誘導・抑制の双方の報告があり一定の見解は得られていない。演者らはヒト膵癌細胞の浸潤能に及ぼすIL-6の効果を検討する目的で、ヒト膵癌細胞株PSN-1から浸潤能の異なる亜株(高浸潤株を5H、低浸潤株を5Lとする)を作成し、5H、5Lの浸潤能の差異とIL-6の関係について報告した(第56回日本癌学会総会)。今回、IL-6が如何なる機序で5Hの浸潤能を増強させるのかを検討した。【方法と結果】浸潤能の判定にはMatrigelをフィルター上にコートしたBoyden chamberを用いた。5Hは5Lに比し約3倍の浸潤能を示した(pは0.01以下)。5H培養上清中のIL-6は5L培養上清中の約16倍で、5H培養上清は各亜株の浸潤能を有意に増強した。また抗ヒトIL-6モノクローナル抗体による免疫沈降法により予め5H培養上清中のIL-6を除去すると、5H培養上清添加による浸潤能誘導効果は有意に低下した。IL-6受容体の発現はflow cytometry の測定によると、5Hが5Lの約136倍の受容体の発現を示した。【結論】高浸潤株5Hはその培養上清中に高濃度のIL-6を産生し、IL-6受容体の発現が高度であった。5H培養上清はその浸潤能を増強させ、さらに培養上清中のIL-6を除去するとその浸潤増強効果が低下することから、5H細胞ではIL-6がautocrine的機序により浸潤能を誘導していると考えられた。