ABSTRACT 1866(P7-8)
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マウスColon26-L5結腸癌細胞により誘導される血管新生に及ぼす神経ペプチドVIPの抑制効果:上谷 幸男、村田 純、小笠原 勝、済木 育夫(富山医科薬科大・和漢薬研・病態生化)

Inhibitory effect of VIP on angiogenesis induced by murine Colon26-L5 carcinoma: Yukio KAMITANI, Jun MURATA, Masaru OGASAWARA, Ikuo SAIKI (Dept. of Patho-Biochem., Res. Inst. Wakan-Yaku, Toyama Med. & Pharm. Univ.)

【目的】 我々はこれまでに神経ペプチドVIP(Vasoactive Intestinal Polypeptide)がマウスColon26-L5結腸癌細胞による実験的肝転移を抑制することを見い出した。今回その抑制機序を解析するため、L5細胞により誘導される血管新生に対するVIPの効果を検討した。
【方法、結果】 L5細胞による血管新生は、L5細胞をマウス背部皮内に移植後翌日から誘導され、その新生血管数は7日目でプラトーに達することを確認した。VIP(125pmol)を腫瘍移植後翌日から連日4日間腫瘍近傍に皮内投与した場合、L5細胞による血管新生は約30%抑制された。この抑制機序を検討した結果、VIP(10-10〜10-6M)はHSE(hepatic sinusoidal endothelial cells)のMatrigelへの浸潤を濃度依存的に抑制し、その抑制率は10-6Mにおいて約50%であった。さらにVIP(10-6M)は、fibronectin, laminin及びtype1-collagen基質への接触移動能を30〜50%抑制した。一方、VIP(10-6M)はfibronectin, laminin及びMatrigelに対するHSEの接着能には影響を及ぼさなかった。今回用いた何れの濃度(10-10〜10-6M)においても、VIPはHSEの増殖能にほとんど影響を与えなかった。
【考察】 L5細胞の実験的肝転移におけるVIPの抑制機序の一つとして、血管内皮細胞の基底膜浸潤、特にその運動性を阻害することにより、腫瘍血管新生を阻害している可能性が示唆された。