ABSTRACT 1874(P7-8)
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消化器癌の肝転移における血清中ムチンの影響:山下好人,澤田鉄二,山本篤,山田靖哉,平川弘聖(大阪市大・医・1外)

Influence of mucins in serum on hepatic metastasis of gastrointestinal carcinoma:Yoshito YAMASHITA, Tetsuji SAWADA, Atsushi YAMAMOTO, Nobuya YAMADA, Kosei HIRAKAWA (1st Dept. of Surg., Osaka City Univ. Med. Sch.)

[目的]消化器癌が産生するムチン上の sLea, sLex などの糖鎖抗原は、血管内皮細胞上の E-selectin のリガンドとなり、肝転移に関与することが知られている。また、このムチン糖鎖は、血清中にも分泌または放出され、腫瘍マーカーとして臨床応用されている。今回、我々は、血清中のムチンが癌の転移に与える影響について検討した。[方法]ヒト膵癌細胞 SW1990 のヒト臍帯血管内皮細胞(HUVEC)への接着試験において、SW1990 の xenograft から精製したムチンを投与し、その影響を検討した。BALB/c ヌードマウスに SW1990 細胞を脾臓内注射する肝転移モデルにおいて、精製ムチンの前投与が肝転移形成に与える影響について検討した。また、SW1990 の xenograft をヌードマウスの皮下または腹腔内に作成し、血中 CA19-9, SPan-1 値を測定の後、SW1990 細胞を脾臓内注射して、肝転移の有無を比較検討した。[結果]ヒト膵癌細胞 SW1990 の HUVEC への接着は、精製ムチンの投与により抑制された。また、ヌードマウスに精製ムチンを前投与することにより、SW1990 細胞の肝転移は有意に抑制された。腹腔内に xenograft を形成したマウスは、皮下に xenograft を形成したマウスに比べて、血中 CA19-9, SPan-1 値が顕著に高く、逆に、癌細胞の脾臓内注射による肝転移は有意に少なかった。[結語]癌細胞より血清中に分泌または放出されたムチンは、癌細胞上のムチンと競合的に E-selectin に結合することにより、癌細胞の肝転移を抑制することが示唆された。