ABSTRACT 1875(P7-8)
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硫酸デキストランによる癌性腹膜炎の予防の基礎的研究:戸川剛1,園山宜延1,山崎純也1,今西努1,大垣雅晴1,萩原明於1,高橋俊雄1, 苗村健治2,浜田新七,蘆原司1京都府立医大1外, 2同1内,同1病理)

Prevention of peritoneal carcinomatosis by Dextran Sulfate:Takeshi TOGAWA1, Yoshinobu SONOYAMA1, Junya YAMASAKI1, Tsutomu IMANISHI1, Masaharu OHGAKI1,Akeo HAGIWARA1,Toshio TAKAHASHI1, Kenji NAMURA 2,Shinshiiti HAMADA3,Tsukasa ASHIWARA31Dept. of 1st.Surg., 2 Dept.of 1st.Int.Med.,3 Dept.of 1st.Pathol.,Kyoto Pref.Univ. of Med.)

【目的】高分子化して腹腔内滞留性を高めた硫酸デキストラン(分子量500.000、以下S-DEXと略す)はフラスコ壁やマウス腹膜へのB-16melanoma 細胞の接着を著しく阻害するが,この細胞接着阻害作用を癌性腹膜炎の予防,治療に応用するための基礎的研究を行った。【方法】0.2mg/ml のS-DEX 処理をされた腫瘍細胞と非腫瘍細胞について(1)MTT assayによるViabilityの評価,(2)細胞死検出ELISAキットを用いたアポトーシスの検出,(3)S-DEX 処理により浮遊化された細胞の再接着性の判定,(4)フローサイトメトリーによる細胞周期の解析,(5)マウスにB-16melanoma細胞を腹腔内投与した癌性腹膜炎モデルにおける延命効果を検討した。【結果】(1)浮遊化された細胞のViabilityには変化がみられなかった。(2) S-DEX 処理によりアポトーシスは誘導されなかった。(3)一度浮遊化された細胞の再接着性は著しく低下した。(4)S-DEX処理された細胞は浮遊細胞と接着細胞の両者ともG1/G0期細胞の有意な増加が認められた。(5)S-DEXの投与により有意な延命効果が認められた。【結論】S-DEX は細胞に対し傷害的ではないが癌細胞の分裂増殖に対し抑制的に働き,かつ癌細胞の腹膜への接着を持続的に阻害することにより癌性腹膜炎を予防できる可能性があると考えられる。正常細胞に対し毒性を持たないことも特筆すべき点である。