ABSTRACT 1885(P7-8)
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マウス線維肉腫細胞の肺転移能獲得に及ぼす抗癌剤UFTとCDDPの影響:崔 成基1、岡田 太1、ハパハク・ハスム1、小林洋三、岸田秀樹、中江 大2、小西陽一2、守内哲也3、細川眞澄男1北大・医・癌研・病理、2奈良医大・がんセ・腫瘍病理、3北大・医・癌研・細胞制御)

Effect of antitumor drugs, UFT and CDDP on the acquisition of lung metastatic ability of mouse fibrosarcoma cell line: Sungki CHOI1, Futoshi OKADA1, Hasem HABELHAH1, Yozo KOBAYASHI2, Hideki KISHIDA2, Dai NAKAE2, Yoichi KONISHI2, Tetsuya MORIUCHI3, Masuo HOSOKAWA1 (1Lab. Pathol. Cancer Inst., Hokkaido Univ. Sch. Med., 2Dept. Oncol. Pathol., Nara Med. Univ., 3Lab. Cell Biol., Cancer Inst., Hokkaido Univ. Sch. Med.)

【目的】癌細胞の転移能獲得に及ぼす抗癌剤の影響を低転移性のマウス線維肉腫を用いて検索した。
【方法と結果】C57BL/6マウスの同系線維肉腫QR-32癌細胞は、転移能のみならず皮下増殖能も低下した細胞である。しかし大量(1x107個)の癌細胞を皮下移植すると腫瘍の生着を認める。腫瘍生着マウスに腫瘍移植後11,13,15日目に CDDP単独 (4mg/kg腹腔内)もしくは5日目よりUFT単独(10mg/kg連日経口)あるいは両剤併用投与を行った。移植後21日目の腫瘍から個体毎に培養株を樹立して転移能の獲得の有無を新たな正常マウスの尾静脈内移植(1x106個)により判定した。転移能が親QR-32癌細胞のそれと比べて有意に亢進した癌細胞株の出現頻度は、非治療群から樹立した9株中2株(22%)に比べ、CDDP投与群では10株中6株(60%)に、UFT投与群では8株中6株(75%)に認めた。両剤併用群では9株全例の肺転移能の獲得が抑制された。腫瘍組織中の8-hydroxyguanine(8-OHdG)レベルは、両剤併用群でのみ有意に減少していた。また各細胞株の肺転移能は、fibronectinに対するchemotaxisと一致した。
【結語】生体内に増殖するマウス線維肉腫に抗癌剤CDDPおよびUFTを単独投与すると転移能が亢進した。しかし、両抗癌剤を併用投与すると転移能の獲得は起きなかった。転移能獲得には細胞外マトリックスに対する癌細胞のchemotaxisの亢進が相関した。