ABSTRACT 1886(P7-8)
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ウシラクトフェリン経口投与による癌転移抑制作用機序の解析:久原徹哉,飯郷正明,牛田吉彦,関根一則,津田洋幸(国立がんセ・化療)

Analysis of anti-metastatic effects by oral administration of bovine lactoferrin: Tetsuya KUHARA,Masaaki IIGO,Yoshihiko USHIDA,Kazunori SEKINE,Hiroyuki TSUDA (Exp. Pathol. & Chemother. Div. Natl. Cancer Ctr. Res. Inst.)

(目的)乳蛋白質の一つであるウシラクトフェリン(bLF)は抗菌や免疫能亢進などの生理活性を有することが知られており、また発癌抑制や癌転移抑制作用を示すことを報告してきた。今回高肺転移系マウス大腸癌Co26Luを用いて、bLFの経口投与によって誘導された癌転移抑制作用の機序を検討した。
(方法)自然転移モデル:Co26LuをBalb/cおよびヌードマウスの大腿部皮下に移植し、移植後3日目からbLF、bLFペプシン分解物(bLFH)、bLF由来抗菌ペプチド(bLFcin)を10-1000mg/kgの用量で3週に渡り週5日間経口投与した。実験転移モデル:Co26Lu培養株を静脈内注射しその後一日目から同様の投与を行った。自然モデルの移植後28日目、実験モデルの12日目に肺を摘出し転移巣数を算定した。実験モデルについて血液中および免疫関連器官から細胞を採取し、FACS解析および細胞障害活性の測定を行った。
(結果)自然モデルにおいてbLF経口投与は30mg/kgから有意な肺転移数の抑制効果を示し(T/C 42% p<0.01)、一方実験モデルでは300mg/kgで有意な抑制効果が認められた(T/C 65% p<0.01)。実験モデルでは移植前のbLF投与でも抑制効果が認められた。bLFHでもbLFと同等の肺転移抑制効果が認められたがbLFcinでは効果が減少または消失する傾向にあった。ヌードマウスを用いた実験ではbLFの効果は低下した。坦癌マウスの末梢血白血球ではbLF投与によりCD4・CD8およびpan-NK陽性細胞のいずれもが有意に増加した。また小腸から採取したリンパ球でも同様の傾向が認められた。
(結論)bLFは経口投与によってCo26Luの肺転移を抑制し、この作用は主に肺に定着した癌細胞に対して発揮されると考えられた。その作用機序の一つとして抗腫瘍細胞性免疫の亢進が示唆された。bLF自身は経口投与後血中ではほとんど検出されないことから、免疫の誘導が消化管内で行われている可能性が示唆された。(厚生省がん研究助成金・がん克服新10か年事業による)