ABSTRACT 1903(P7-10)
肺腺がん病巣中の線維芽細胞の細胞生物学的特徴:飯島達生1、間瀬憲多朗1、石川成美2、野口雅之1(1筑波大・医・基礎、2筑波大・医・臨床)
Biological characteristics of fibroblast in pulmonary adenocarcinoma: Tatsuo IIJIMA1, Kentaro MASE1, Shigemi ISHIKAWA2, Masayuki NOGUCHI1 (1 Inst. Basic Med. Sci., Univ. Tsukuba, 2 Inst. Clin., Med. Sci., Univ. Tsukuba)
[目的]我々は肺腺がんでがん部線維芽細胞の活性化像が予後不良を示唆する因子として重要であることを報告してきた。その原因の1つとしてがん部の線維芽細胞の産生する物質によりがん細胞の浸潤、転移が促進されていることが考えられた。本研究は肺腺がんのがん部と非がん部の線維芽細胞短期培養株を用いて、がん部の線維芽細胞が肺腺がん細胞の浸潤、転移能の指標の1つとなる遊走能に与える影響を調べた。[方法]肺腺がん手術例のがん部と非がん部のそれぞれから作製した線維芽細胞の短期細胞培養株4例、8株についてそれぞれ無血清DMEMより訓化培地を作製した。この訓化培地に対して肺腺がん培養細胞株(A549)を用いてBoyden chamber法による遊走試験を行った。[結果]線維芽細胞の訓化培地は4例のがん部と非がん部のもので共に、対照の無血清DMEMに比較して有意に腺がん細胞の遊走を促進した。また4例中3例ではがん部と非がん部で有意差は無く、同程度の遊走促進効果を示した。しかし1例では非がん部の線維芽細胞訓化培地ががん部のものに比較して促進効果が強かった。以上より肺線維芽細胞は肺腺がん細胞の遊走促進することが示された。また4例中3例でがん部と非がん部の線維芽細胞の訓化培地の遊走促進効果に差が見られなかったが、これはがん部の線維芽細胞と非がん部の線維芽細胞で肺腺がん細胞の遊走促進効果については本質的には差がないことを意味していると考えられた。