ABSTRACT 1927(P8-2)
 ポスターセッション一覧 トップ 


マウスブルトン型チロシンキナーゼ (Btk) の PH 領域に会合する分子の同定:菊池雄士1,2,平野雅之2,高津聖志21北里研・基礎研・分子免疫,2東大・医科研・免疫)

Identification of a molecule which associate with the PH domain of the Btk : Yuji KIKUCHI1,2, Masayuki HIRANO2, Kiyoshi TAKATSU2 (1Dept. Mol. Immunol., Kitasato Inst., 2Dept. Immunol., Inst. Med. Sci., Univ. Tokyo)

BtkはマウスX染色体連鎖免疫不全(XID)の原因分子として同定された細胞内チロシンキナーゼである。Btkのpleckstrin homology (PH) 領域に一つのアミノ酸変異(Arg28→Cys)を有するXIDマウスはB細胞分化異常に起因する広範なB細胞免疫不全を示す。また、BtkはN末から41番目のアミノ酸変異(Glu→Lys)により自己リン酸化の亢進とtransforming activity を獲得することからBtkの不活化や活性化が自己免疫疾患や細胞の異常増殖と深く関連していると考えられている。今回、B細胞活性化におけるBtkの重要性に着目し、Btkを含むシグナル伝達系を明らかにする目的でPH領域に会合する分子の同定を試みた。その結果、IL-5刺激によりBtk活性が亢進する早期B細胞株Y16由来のcDNAライブラリーから547アミノ酸から構成されると考えられる分子のcDNAを単離した。予想されるアミノ酸配列はプロリン、セリンに富み、3箇所のチロシンリン酸化モチーフを含んでいた。部分欠失蛋白を用いた解析から214番目から256番目のアミノ酸がBtkとの会合に重要であることが示唆された。相同性の解析の結果、この分子はヒトLTG19/ENLとヌクレオチドで約87%、予想されるアミノ酸で約85%の相同性を持つことが明らかとなった。LTG19/ENL遺伝子はleukemia細胞株で11q23に位置しているMLL遺伝子との間での転座が認められているがその機能は明らかにされていない。現在、この分子の部分欠失蛋白の発現細胞株を用いてBtkを介したシグナル伝達系における役割の解析を進めている。(愛知ガンセンター・瀬戸博士らとの共同研究)