ABSTRACT 1996(P9-1)
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受容体チロシンキナーゼRet及びGDNF、GFR-αの造血細胞における発現と機能:中山誠子1,飯田健一2,岩田洋介3,村上秀樹4,岩下寿秀4,浅井直也4,高橋雅英41名古屋掖済会病・内、2稲沢市民病・病理、3名大病・病理部、4名大・第2病理)

Expression of the Ret receptor tyrosine kinase , GDNF, and GFR-α and their function in hematopoietic cell : 1Seiko NAKAYAMA, 2Ken-ichi IIDA, 3Yosuke IWATA, 4Hideki MURAKAMI, 4Toshihide IWASHITA, 4Naoya ASAI, 4Masahide TAKAHASHI ( 1Dept. Int.Med.,Nagoya Ekisaikai Hosp., 2Dept. Patho.,Inazawa City Hosp.,3Dept.Patho.Nagoya Univ.Hosp., 4 2nd Dept.Patho., Nagoya univ.sch. Med.)

受容体チロシンキナーゼRetは、近年神経成長因子Glial cell line-derived neurotrophic factor(GDNF)やNeurturin(NTN)の受容体サブユニットとしてそのシグナル伝達に関与することが明らかとなり、血液系細胞での発現も報告されている。GDNFとNTNによるRetの活性化に必要な膜蛋白GDNF receptorα(GFR-α)のファミリーも次々に同定され、Retを介したシグナル伝達系が神経系のみならず他の臓器でも重要な役割を果たしていることが示唆されている。Ret及びGDNF、NTN、GFR-αの造血細胞における発現をRT-PCR、免疫組織化学及び細胞表面マーカーを用いて解析した。マウス骨髄細胞、脾の造血細胞において前骨髄球、骨髄球、後骨髄球でRetの強い発現が見られた。それに比べてCD34、SCA-1陽性細胞やより分化した好中球での発現は弱かった。Retを発現しているヒト白血病細胞の細胞株(HL-60、THP-1)において、レチノイン酸、TPAにより分化を誘導するとRetの発現は低下した。マウス骨髄細胞の長期培養系において浮遊造血細胞にはRetのみが発現しているが、骨髄ストローマ細胞 には GFRα-1、GFRα-2、GDNF の発現がRT-PCRで確認された。骨髄ストローマ細胞に付着している造血細胞にRet陽性細胞を認めた。以上の結果より骨髄造血微少環境における造血細胞とストローマ細胞との相互作用によるGDNF-Ret系の機能的意義が示唆された。