ABSTRACT 1997(P9-1)
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神経芽腫培養細胞株における、GDNF/NTNシグナル伝達機構の役割:磯貝恵理子、菱木知郎、高田尚幸、中川原章(千葉がんセ・研・生化)

Role of GDNF/NTN signal transduction in neuroblastoma cell lines. : Eriko ISOGAI, Tomoro HISHIKI, Naoyuki TAKADA, Akira NAKAGAWARA (Div. of Biochem., Chiba Cancer Ctr. Res. Inst.)

(目的)新しい神経栄養因子である GDNF および NTN は TGFβ superfamily に属し、RetチロシンキナーゼとGPI 結合型受容体であるGFRα-1またはGFRα-2の四量体を受容体とする。神経芽腫初代培養細胞は高頻度にGDNF/NTNに反応し、分化・生存することを前回報告したが、今回は22の神経芽腫細胞株におけるシグナル伝達機構について解析した。
(方法)受容体およびGDNF/NTNの発現はノーザンブロット法およびRT-PCRにて検索した。GDNF/NTNによるシグナル伝達は、イムノプレシピテーション法とウエスタンブロット法により解析した。Ret遺伝子変異の検索はPCR-SSCP法によった。
(結果および考察)ノーザンブロットにて神経芽腫細胞株22株中12株に遺伝子変異のないRetが高発現していたが、GDNF/NTNに反応し神経突起の伸展が誘導されたものはわずかに7株であった。レチノイン酸によりGFRαは誘導されずRet発現のみが誘導されたが、これにより反応性を獲得する細胞株が5株存在した。GDNFとNTNはそれぞれ54%, 68%に発現しており、autocrine/paracrineシステムの存在が示唆され、この生存シグナルが腫瘍増殖を促進しているものと思われた。細胞内シグナル伝達では、Ras-MAPK経路が主と思われたが、PI3-KとAktの活性化も見られた。しかし、IRS-1は活性化されなかった。