ABSTRACT 1999(P9-1)
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ヒト乳腺および乳癌組織における IGF と IGF-Iレセプター遺伝子の発現と患者肥満度との関連 : 菅 謙司,今井一枝,江口英孝,林 慎一,東 靖弘,中地 敬佐賀医大・輸血,埼がんセ・研,埼がんセ・病・乳外)

Association of mRNA expression of IGFs and IGF-I receptor with body mass index in the tissue of human mammary gland and carcinoma: Kenji SUGA1, Kazue IMAI2, Hidetaka EGUCHI2, Shin-ichi HAYASHI2, Yasuhiro HIGASHI3, Kei NAKACHI2 (1Dept. of Blood Transfusion, Saga Medical School, 2Saitama Cancer Center Res. Inst., 3Dept. of Breast Surg.)

肥満や閉経年齢などの宿主要因が、乳癌の発生および予後に関連していることは、多くの疫学研究で示されている。これら宿主要因がどのようなメカニズムで乳癌の発生および進展に関与しているかを明らかにするため、埼玉県立がんセンター病院で手術を受けた106名の原発性乳がん患者を対象に正常乳腺組織および乳癌組織における IGF-I, IGF-II, IGF-Iレセプター (IGF-IR) mRNA の発現をsemi-quantitative RT-PCR法により測定した。更に、これら遺伝子の発現と肥満度 (BMI)、妊娠歴、出産歴、閉経年齢などの疫学的宿主特性、および組織型,腫瘍サイズなど腫瘍特性との関連を検討した。閉経後の乳癌組織については、BMI が高い群で、IGF-IR, IGF-II mRNAの発現が共に高く、正常乳腺組織でも、同様の傾向が認められた。この BMI との関連は、閉経前乳がんでは認められなかった。次に、組織型との関連では、硬癌でIGF-II mRNAの発現が高かった。さらに、乳癌組織でのIGF-IRの発現は、cyclin D1, bcl2 mRNA の発現と有意な相関が認められた。要するに、臨床・疫学的に観察された肥満度と乳癌の発生および進展との正の関連性に、IGF-IR, IGF-IIを介した系が深くかかわっていることが示された。この結果から、乳癌細胞は cell cycle や apoptosis に影響を受ける可能性が示唆された。