ABSTRACT 2005(P9-1)
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エンドトキシン投与によって引き起こされる大量肝細胞死/劇症肝炎に対するHGFの抗アポトーシス/発症阻止作用:小清水右一, 小財健一郎1,2, 松本邦夫, 中村敏一阪大・医・バイオセ, 久留米大・医・小児科)

HGF Prevents Endotoxin-induced Fulminant Hepatic Failure in Mice:Uichi KOSHIMIZU, Ken-Ichiro KOSAI1,2, Kunio MATSUMOTO, and Toshikazu NAKAMURA (Biomed. Res. Center, Osaka Univ. Med. School, Dep. Pedia., Kurume Univ. Med. School)

【目的】肝炎ウイルスや細菌感染,肝毒性をもつ薬物投与などによって引き起こされる劇症肝炎は予後のきわめて悪い重篤な肝疾患である.近年,劇症肝炎はFasやTNFレセプターを介した広範性肝細胞死(アポトーシス)が引き金となっていることが明らかとなっている.エンドトキシン投与は主としてTNFレセプターを介した肝細胞死を伴う劇症肝炎を誘起するが,私達は今回,肝再生因子であるHGFがその発症を強力に防止することを見いだした.【方法・結果】エンドトキシンをマウス腹腔内に投与すると5-6時間後から急激な肝細胞死に伴い血清GPTレベルが上昇し,8時間後には肝機能不全のため全個体が死亡した.一方,リコンビナントHGFを投与したマウスでは肝細胞死が著しく抑制された結果,血清GPTレベルの上昇は強力に抑制され,75%の個体が肝不全に至ることなく生存した.またHGFを投与したマウスの肝臓ではBcl-xLの著明な発現上昇とCPP32プロテアーゼ活性の著しい低下が認められた.【考察】HGFは肝細胞にBcl-xLの発現を誘導し,ICEファミリープロテアーゼの活性化を阻止することにより強いアポトーシス効果を示すことが明らかになった.私達は既にHGFがFasを介した劇症肝炎に対しても強い発症防止作用をもつことを報告しており,抗アポトーシスおよび肝再生促進作用を有するHGFは劇症肝炎の発症阻止に有効な治療薬となることが期待できる.