ABSTRACT 2006(P9-1)
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クリングルドメインを有するHGFアンタゴニストの血管新生阻害作用:久場敬司1、松本邦夫1、伊達和彦1, 2、志村英生3、田中雅夫2、中村敏一11阪大・医・バイオセ、2九大・医・一外、3福大・医・一外)

Anti-angiogenic activity of a four kringle-containing HGF-antagonist, HGF/NK4: Keiji KUBA1, Kunio MATSUMOTO1, Kazuhiko DATE1, 2, Hideo SHIMURA3, Masao TANAKA2, Toshikazu NAKAMURA1 (1Biomed. Res. Center, Osaka Univ. Med. Sch., 2Dept. Surg. 1, Fac. Med., Kyushu Univ., 3Dept. Surg. 1, Fac. Med., Fukuoka Univ.)

【目的】癌の増殖能や転移能の亢進といった癌の悪性化に関与する腫瘍血管新生の阻止は有効な制癌戦略の一つである。私達は4個のクリングルドメインを含むHGFの分子内断片(HGF/NK4)をHGFアンタゴニストとして調製し、HGF/NK4が浸潤・転移を抑制することを示したが、今回、HGF/NK4は腫瘍血管新生阻害作用を有することを明らかにした。【方法と結果】HGF, bFGF, VEGFはいずれも血管新生促進因子であり、培養ヒト微小血管内皮細胞の増殖を促進した。一方、HGF/NK4はHGFによって促進される血管内皮細胞の増殖を阻害するのみならず、bFGFやVEGFの増殖促進作用をも阻害し、しかもその増殖抑制作用はアンジオスタチンよりも強力であった。またHGF/NK4の血管新生阻害作用はニワトリCAMアッセイ法においても認められた。さらに、マウスLewis肺癌をマウス皮下に移植した後、癌組織近傍にHGF/NK4を持続的に注入したところ、HGF/NK4は癌組織の血管新生を抑制し、癌の成長を抑制した。【考察】HGFアンタゴニスト、HGF/NK4が新たに血管新生抑制作用を有することを見いだした。HGF/NK4は、同様にクリングルドメインからなるアンジオスタチンと同じメカニズムで血管新生を抑制している可能性も考えられる。浸潤・転移阻止、腫瘍血管新生阻止は制癌剤開発のターゲットであり、HGF/NK4の新しい制癌剤としての応用が期待される。