ABSTRACT 2010(P9-1)
大腸癌におけるcyclooxygenase 2の発現と臨床病理学的因子についての検討:藤田毅1、松井稔2、植竹宏之1、市川度1、武藤誠2、杉原健一1(1東京医歯大・2外、2東大・薬)
Increased levels of cyclooxygenase 2 in human colorectal cancer tissues of various extents of tumor progression : Takeshi FUJITA1, Minoru MATSUI2, Hiroyuki UETAKE1, Wataru ICHIKAWA1, Makoto TAKETO2, Kenichi SUGIHARA1 (1Second Dept. of Srg. Tokyo Med. and Dent. Univ., 2Dept. of Phar. Tokyo Univ.)
[目的] 大腸癌におけるcyclooxygenase 2(COX-2)の発現量を測定し、臨床病理学的因子との相関を分析し、癌進展とCOX-2との関連を検討した。
[方法] '97年1月から'98年2月の切除大腸癌44例を対象とし、癌部と正常粘膜部のCOX-2 mRNAをRT-PCR法を用いて測定した。定量の信頼性を高めるために、COX-2発現量の指標としてCOX-1との比をとり、一方のprimerを共通とした。臨床病理学的因子との相関は、ANOVA,t検定,相関係数を用いて検討した。
[結果] COX-2発現量は、癌部で1.6±0.2、正常粘膜部で0.2±0.1 (mean ± SE)であった(p<0.001)。癌部のCOX-2は腫瘍面積との相関を認めた(p=0.01)。また、腫瘍最大径(5cm未満と以上)と深達度(ssまでとse以上)によって有意差を認めた(p=0.02,0.03)が、リンパ節転移の有無では差を認めなかった。
[考察] COX-2発現量は原発巣の成長増大に伴い上昇していたが、転移には無関係であった。すなわち、COX-2は、癌の成長自体に関与し、転移能の獲得とは無関係と推測できる。しかし、本研究では癌細胞と間質細胞を識別して検討しておらず、今後は免疫組織学的染色による検討が必要である。