ABSTRACT 2013(P9-1)
ラット肝細胞増殖とTNF-αとの関連性に関する検討: 久保善嗣、坂井田功、内田耕一、沖田 極 (山口大一内)
Possible role of TNF-alpha on rat hepatocyte proliferation: Yoshitsugu KUBO, Isao SAKAIDA, Kouichi UCHIDA, Kiwamu OKITA (First Dept.of Int. Med.,Yamaguchi Univ.School of Med.)
肝発癌過程を理解する上で肝細胞増殖機構を解明する事は重要であると考えられる。我々は以前よりラット肝細胞増殖とTNF-αとの関連性をLead Nitrate(LN)モデルを始めとする種々のモデルを用いて検討し報告してきた。今回、Kupffer細胞の機能阻害薬・Gadolinium Chloride(GaCl)にも微弱ではあるが肝細胞増殖作用があり、しかもLNモデルとは増殖パターンが大きく異なることを見出したので、LNモデルとGaCl投与群という両系の増殖現象と,TNFαを含めた数種のサイトカインの発現に関して検討を行った。BrdUによる検討でGaCl及びLN両群共に24時間後より肝細胞増殖が開始したがGaCl投与群ではLN系に比して低レベルの増殖が持続した。Competitive RT-PCRによる検討ではTNF-αmRNAはGaCl投与群においても早期より発現増強を認めたが、LN系に比して発現増強の長時間持続がみられた。またIL-10mRNAはLNモデルでは発現増強を認めたがGaCl投与群では有意な発現増強は認められなかった。GaCl投与によるラット肝細胞増殖にもTNF-αmRNAの早期発現増強の関与が推察され、その増殖現象の持続はGaClのKupffer細胞機能抑制作用に基づくIL-10のmRNA発現抑制と、TNF-αのmRNA発現増強の持続により説明し得ると考えられた。以上よりTNF-αの肝細胞増殖開始因子もしくは肝細胞増殖関連因子としての可能性が強く示唆された。