ABSTRACT 2020(P9-1)
悪性黒色腫細胞、母斑細胞、正常表皮色素細胞におけるproopiomelanocortin(POMC)遺伝子産物および、corticotropin releasing hormone(CRH)、CRH受容体の発現:里 博文1、船坂陽子1、長濱通子2、大橋明子3、市橋正光1(1 神戸大学医学部皮膚科学教室、2 鐘紡記念病院、3 神鋼病院)
Expression of proopiomelanocortin(POMC),corticotropin releasing hormone(CRH) and CRH receptor in malignant melanoma cell, nevus cell and normal melanocyte:Hirofumi SATO1,Yoko FUNASAKA1,Michiko NAGAHAMA2,Akiko OHASHI3,Masamitsu ICHIHASHI1(1 Depart. of Derma.,Kobe Univ. School of Medicine,2 Kanebo-kinen Hosp.,3Shinko Hosp.)
(目的) Proopiomelanocortin(POMC)遺伝子産物の一つ、α-MSHは表皮メラノサイトの増殖、分化を誘導するのみならず、マウス黒色腫細胞に高転移能を賦与し、autocrine機序による浸潤能獲得など腫瘍進展への関与があるのではないかと推察されている。色素細胞の悪性化、腫瘍進展におけるPOMCの働きを明らかにする目的で、色素細胞増殖病変部におけるPOMCの発現およびPOMCの発現制御に関わるcorticotropin releasing hormone(CRH)、CRH受容体の発現について検討した。
(方法)(1)POMC遺伝子産物(α-MSH、ACTH、β-endorphin)およびCRHに対する抗体を用いて色素細胞増殖病辺部組織におけるこれらペプチドの発現を検討した。(2)培養色素細胞(正常色素細胞、母斑細胞、悪性黒色腫細胞5株-p22、p39、A101D、MEWO、YP-Mel-)を用いてRT-PCR法にてCRH、CRH受容体m-RNAの発現を、また、Western blotting法にてCRH蛋白の発現を解析した。
(結果)(1)POMCおよびCRHペプチド共、一部の母斑細胞にて弱陽性反応を認めるのに対し、黒色種ではALMの垂直増殖部、NM、転移部にて強陽性の所見が得られた。(2)正常色素細胞、境界母斑細胞、真皮母斑細胞、黒色腫細胞5株の全てにおいて、CRH、CRH受容体の発現が見られたが、特に黒色腫細胞では、良性の色素細胞に比しその発現が明らかに亢進していた。
(考察)視床下部-下垂体のみならず色素細胞、特に悪性化した色素細胞においてCRH/CRH受容体/POMCが強く発現していることが判明した。色素細胞の悪性化にこれらペプチドの発現増強が関与している可能性が示唆された。