ABSTRACT 2021(P9-1)
乳腺増殖性病変におけるc-kitがん遺伝子産物の発現(最終報):津浦 幸夫、鈴木 利光(福島県立医科大学医学部第2病理)
Immunohistochemical expressions of c-kit product in proliferative lesions of breast-the final report:Yukio TSUURA, Toshimitsu SUZUKI(Dept. of Path., Sch. of Med., Fukushima Med. Univ. )
(はじめに)我々は女性の正常乳腺および良性増殖性病変で恒常的に発現していたc-kit mRNA/産物が、異型乳腺上皮過形成、非浸潤性乳管癌、浸潤癌でその発現が高度に抑制されることを示してきた。しかし、男性乳腺増殖性病変における発現については未だ明らかではない。我々はこれらについて他の乳癌関連遺伝子産物とともに検討した。(材料と方法)男性乳癌7例と女性化乳房4例のホルマリン固定、パラフィン包埋材料に対して、抗c-kit, 抗c-erb-B2, 抗Estrogrn receptor(ER), 抗p-53(Do-7)のそれぞれの抗体を用いた免疫染色を行った。(結果と考察)c-kit産物は男性乳腺増殖性病変に広く認められた。また、男性乳癌では全例でERが認められたが、p53は陰性であった。c-erb-B2は7例中3例で陽性であった。 一方、女性化乳房ではいずれもc-kit, ERが陽性であったがc-erb-B2, p53は陰性であった。これから、男性乳癌では女性乳癌と異なって腫瘍の増殖にc-kit systemの関与が示唆されると共に、男性乳管上皮の悪性変化が女性のそれと異なった経路をたどる可能性が示唆された。