ABSTRACT 2024(P9-2)
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ヒト上皮細胞での神経成長因子受容体p75およびTrk群の発現:森村茂1,菊地慶司1,国村忠司2,安本茂11神奈川がんセ・研・分子腫瘍,2ニッショー・総研)

Expression of p75- and Trk family- neurotrophin receptors in normal and transformed human epithelial cells : Shigeru MORIMURA1, Keiji KIKUCHI1, Chujii, KUNIMURA2, Shigeru YASUMOTO1 (1Lab. Mol.. Cell Biol., Kanagawa Cancer Ctr. Res. Inst, 2Nissho Co. Res. Ctr.)

【緒言】ヒト上皮組織には神経成長(栄養)因子(NT)の低親和性受容体p75を発現している細胞が、わずかながらパッチ状に存在していることが認められる。それらの分布などから、我々はそれらの細胞集団が上皮幹細胞を含んでおり、癌細胞の起源となりうるのではないかと想定している。我々は昨年度の本会でヒトパピローマウィルス16型(HPV16)あるいはSV40ウィルスのDNAをトランスフェクションして不死化したヒト子宮頚部由来の上皮細胞のほぼすべての細胞株でp75が発現していること、またそれらの細胞ではp75が細胞増殖よりもむしろ細胞接着に関与している可能性を報告した。一方、上皮特異的に発現している高親和性NT受容体として報告されたTrkEがコラーゲン受容体として機能していることが現在明らかにされつつある。上皮細胞系で発現しているTrkがどのような種類であり、p75とともにどのように機能しているのか明らかにするために、上記の不死化細胞株を中心に、正常から癌にいたるヒト上皮細胞系でのtrk遺伝子群の発現を検討した。
【実験材料および方法】trk遺伝子の発現は逆転写PCR法ーサザン法によって調べた。プライマーはtrkA、B、C、Eに共通の配列で、チロシンキナーゼ部分を増幅するように設定した。増幅されたDNA断片をクローニングし、塩基配列からどのtrkが発現しているのか決定した。
【結果と考察】ヒト子宮頚部扁平上皮由来の初代細胞ではtrk遺伝子の発現はほとんど認められなかった。不死化細胞株9株では、初代細胞から陽性対照としたK562細胞と同程度までの、さまざまな量のtrkの発現が認められた。p75の発現量とtrk遺伝子の発現量の間には直接の相関は認められなかった。これらの細胞で発現しているtrkは、現在までの結果ではtrkAである。