ABSTRACT 2028(P9-2)
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Wild type KGFR遺伝子移入によるヒト唾液腺由来腺癌細胞の増殖制御:田中 良治,張 雁, 坂本 哲彦,道向 栄二,虎谷 茂昭,岡本 哲治 (広島大・歯・口外1)

Wild-type KGFR gene inhibits growth in vitro and in vivo of human salivary gland-derived adenocarcinoma cells: Yoshiharu TANAKA, Yan ZHANG, Akihiko SAKAMOTO, Eiji MICHIMUKAI, Shigeaki TORATANI and Tetsuji OKAMOTO (Dept. of Molecular Oral Medicine and Maxillofacial Surg. 1, Hiroshima Univ., Scho. of Dent.)

我々は,唾液腺腫瘍の悪性転換に伴いfibroblast growth factor(FGF)-2の過剰発現とKGFR/FGFR2-(IIIb)からFGFR1-(IIIc)遺伝子へのスイッチングが起こることを明らかにした。さらに,唾液腺由来腺癌細胞HSYにdominant negative FGFR1-(IIIc)遺伝子を導入することによりin vitro およびin vivo における同細胞の増殖が抑制されることを報告し,ヒト唾液腺腫瘍の悪性化にFGF-2-FGFR1系が関与していることおよびKGF-KGFR系が唾液腺上皮における分化の制御に大きく関与していることを示唆した。今回,HSY細胞にwild type(wt)KGFR遺伝子を導入し,in vitro, in vivo における増殖能を検討した。wtKGFR遺伝子をpcDNA3.1zeo vectorを用いて,HSY細胞に遺伝子導入しzeocin耐性細胞を分離後,125I-KGFを用いた受容体結合試験によりwtKGFR過剰発現HSY細胞(wtKGFR-HSY)を7クローン得た。対照としてvectorのみを導入したzeocin耐性HSY細胞(zeo-HSY)を用いた。wtKGF-HSY細胞は無血清培地中では増殖不可能であった。また,wtKGF-HSY細胞は,FGF-1により増殖が促進されたが,FGF-2およびKGFに対する反応性は認められなかった。一方,zeo-HSYは無血清培地中で増殖し,FGF-1,-2により増殖促進された。wtKGFR-HSYのヌードマウス背部皮下における造腫瘍性はzeo-HSYと比較して低下した。これらの結果から,wtKGFR遺伝子を用いたヒト悪性唾液腺腫瘍の遺伝子治療の可能性が強く示唆された。