ABSTRACT 2095(P9-6)
 ポスターセッション一覧 トップ 


腫瘍退縮因子(補体C3因子と関連した好中球遊走活性を有する巨大分子)の cDNA解析:國元武彦1,馬場弘靖1,津田洋幸1,新田和男21国立がんセ・研・化療,2微化研)

cDNA analysis of tumor-regressing factor- a complement C3b-related protein with neutrophils-chemotactic activity: Takehiko KUNIMOTO1, Hiroyasu BABA1, Hiroyuki TSUDA1 and Kazuo Nitta2 (1Exp. Pathol. & Chemother. Div., Natl. Cancer Ctr. Res. Inst., 2Inst. Microbial Chemistry)

担癌マウスに抗腫瘍多糖体CM-TAK(直鎖β-1,3-glucanのカルボキシメチル化体)を投与すると,血清中に,急激な腫瘍細胞の減少と腫瘍内への好中球の集積をもたらす腫瘍退縮因子 (Tumor-regressing factor: TRF) が誘導される。 TRFは主として約70-kDのモノマーから構成される巨大分子で好中球遊走活性を示す。TRFモノマーのN末端の17アミノ酸はマウス補体C3のβ鎖のN末端と一致した。しかし抗17-mer抗体,抗C3(マウス)抗体,抗β鎖(ヒト)抗体との反応においてβ鎖とTRFモノマーとの間には差がみられ,両者は異なる蛋白と考えられた。そこでTRFの遺伝子の単離を目標とし,今回はcDNAの解析を行った。
【方法】マウスにCMTAKを腹腔内投与して8時間後の好中球からRNAを抽出してcDNAを合成し,マウス補体C3のcDNAの5'端23-mer(SP1),隣接する23-mer(SP2),およびoligo-dTをprimerとしてPCR反応を行った。
【結果と考察】SP1とoligo-dTを用いて3'-RACE-PCRを行い,得られた特異的なバンドに対し,より内側のSP2をprimer としてnested PCRを行った結果,TRFモノマーに対応する可能性のある1.8および2.1 kbpの生成物の増幅を認めた。また0.65,1.4 kbのバンドも増幅された。これらの塩基配列は現在追求中である。補体C3のβ鎖はα鎖と結合したpro-C3として約5 kbのmRNAから合成されるのに対し,TRFモノマーはC3とは異なるtranscriptから合成される可能性が示唆された。