ABSTRACT 2130(P10-3)
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P53遺伝子変異のheterogeneityを認めた食道癌肉腫の1例 :中川 悟,西巻 正,鈴木 力,神田達夫,大日方一夫,田邊 匡,小向慎太郎,畠山勝義 (新潟大1外科)

Heterogeneity of p53 gene mutation in a carcinosacoma of the esophagus: Satoru NAKAGAWA, Tadashi NISHIMAKI, Tsutomu SUZUKI, Tatsuo KANDA, Kazuo OBINATA, Tadashi TANABE, Shintarou KOMUKAI, Katsuyoshi HATAKEYAMA (1st Dept. of Surg, Niigata Univ.)

食道の癌肉腫はまれな腫瘍であり、その肉腫様にみえる細胞の組織発生についてはまだ明らかになっていない。食道癌の発癌において比較的早期より変異を起こすp53遺伝子を癌部と肉腫様部で別々に検索したところ突然変異のheterogeneityを認めたので、免疫染色による検討も加え報告する。
材料、方法 :外科切除されホルマリン固定、パラフィン包埋された癌肉腫の標本の癌部、肉腫様部から別々にDNAをmicro-dissection法にて抽出し、p53遺伝子のExon 5 ~ 8の塩基配列をPCR法-Direct sequence法にて解析した。また、同標本を上皮系マーカー(CAM5.2, AE-1, EMA)及び間質系マーカー(S-100, NSE, vimentin, desmin, MSA, α1-antitrypsin,α1-antichymotrypsin)にてABC法を用い免疫染色した。
結果 :p53遺伝子変異は癌部ではcodon160 (Met→Val)で、肉腫様部はcodon163 (Try→Asp)とcodon248 (Arg→Glu)で認められた。免疫染色は癌部では上皮系マーカーのみ、肉腫様部ではvimentin,α1-antitrypsin,α1-antichymotrypsinが陽性に染色された。
考察 :p53遺伝子変異のheterogeneityより、癌部と肉腫様部は少なくともp53遺伝子が突然変異を起こした後の同一細胞に由来しているのではないと考えられる。また、免疫染色からは肉腫様の細胞は間葉系細胞の性格を有しており、この症例は真性癌肉腫であると考えられる。