ABSTRACT 2134(P10-3)
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びまん浸潤性胃癌における細胞接着分子(E-cadherinとα, β, γ-catenin)の免疫組織学的検討:上月俊夫,八尾隆史,恒吉正澄(九大.医.2病理)

E-cadherin and α,β,γ-catenin expression in diffusely infiltrative gastric carcinoma:Toshio KOUZUKI, Takashi YAO, Masazumi TSUNEYOSHI(Dept.Pathol.II Kyushu Univ.)

(目的)細胞接着分子であるcadherinとcateninの発現性の低下が、癌の浸潤,リンパ節転移に関与し予後不良因子であることが知られている。今回、びまん浸潤性胃癌の粘膜内組織型により、分化型成分を含む例(M群)と純粋に低分化型腺癌のみの例(P群)に分類し、リンパ管侵襲を含む発育浸潤様式と細胞接着分子の発現性について検討した。
(材料と方法)びまん浸潤性胃癌106例(M群64例、P群42例)のホリマリン固定パラフィン包埋材料を用いて、E-cadherin及びα,β,γ-cateninの発現を免疫組織学的に検討した。
(結果)リンパ管侵襲高度例は、M群(71%)はP群(36%)と比較し有意に高率であったが、他の臨床病理学的事項について両群に差はみられなかった。M群の粘膜内分化型成分において、発現低下例はそれぞれE, α,β,γ=30%,59%,41%,44%で、粘膜内低分化型成分においては、E, α,β,γ=78%,98%,94%,97%であった。また、P群はE, α,β,γ=90%,100%,95%,100%であった。 両群ともに浸潤部での発現は粘膜内成分とほぼ同様であった。以上のように両群の低分化型成分では、cadherinとcateninの発現に差は見られなかったが、分化型成分では低分化型成分より有意に発現が保持されていた。また、リンパ管内の癌巣では、cadherinとcateninの発現が保持されている傾向にあり、M群とP群で差は見られなかった。
(まとめ)びまん浸潤性胃癌において、接着分子の発現が低下した低分化型腺癌の中でも、粘膜内に分化型成分を認める(分化型癌由来と考えられる)ものが高度にリンパ管侵襲を認めることより、癌の組織発生と発育進展様式の関与のが示唆された。