ABSTRACT 2135(P10-3)
H. pylori 除菌療法の反応性からみた胃MALTリンパ腫の分類:中村常哉1,鈴木隆史1,大橋計彦1,中村栄男2(1愛知がんセ・消内,2同臨床検査部病理)
Pragmatic classification of gastric low-grade B-cell lymphoma of MALT type based on the reaction to cure of H.pylori infection :(Tsuneya NAKAMURA1, Takashi SUZUKI1, Kazuhiko OOHASHI1, Shigeo NAKAMURA2 (1Dept. of Gastroenterology , 2Dept. of Pathol. & Clin. Labo., Aichi Cancer Center Hospital)
【目的】H. pylori 除菌療法に対する反応性からみた胃MALTリンパ腫の病態について検討する。【対象と方法】対象は胃MALTリンパ腫30例。H. pylori の検出は生検組織培養と血清抗H. pylori-IgG抗体価。H. pylori の除菌法はamoxicillin1500mg/日, clarithromycin 400mg/日, lansoprazole 30mg/日 2週間投与を主に行った。除菌判定は組織培養と13C-urea breath test。14症例では病変部生検標本の免疫グロブリンの重鎖遺伝子再構成の検索をSouthern blotting、PCRにより行った。除菌に対する反応性を内視鏡所見の改善と組織所見の改善でcomplete remission (CR)、partial remission (PR)、no change (NC)で評価した。【成績】(1) H. pylori は26例で陽性、4例で陰性と判定された。陽性例に対し除菌を行い2-47ヶ月(平均15.4カ月)の経過で25例で陰性化した。(2) 除菌成功例における反応性はCR12例、PR10例、NC3例であった。(3) PR例はCR例に比し高齢で、病変部の広がりが広い症例が多かった。(4) 除菌療法前後における遺伝子再構成を検索した症例の結果は、CR例ではGermline(G)からGが7例、Rearrangement(R)からGが2例であり、PR例ではRからRが4例であり、NC例ではRからRが1例であった。
【考察】胃MALTリンパ腫のH.pylori 除菌療法に対する反応性はCR、PR、NCに分かれ、それぞれ病態が異なっている。我々はそれぞれをMALT-A,B,Cと分類し、MALT-Aはごく初期の腫瘍性病変あるいはdysplasia、MALT-BはH.pyloriによる抗原刺激で増殖する腫瘍性病変、そしてMALT-CはH.pyloriとは独立した腫瘍性病変と考えている。