ABSTRACT 2143(P10-3)
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大腸鋸歯状腺腫の病理組織学的検討:佐藤 一、上杉憲幸、菅井 有、中村眞一 (岩手医科大学・医・臨床病理) Histopathology of the colonic serrated adenomas : Hajime SATO, Noriyuki UESUGI, Tamotsu SUGAI, Shin-ichi NAKAMURA (Div. of Pathol., Ctr. Clin. Lab., Iwate Med. Univ.)

【目的】鋸歯状腺腫 ( SA ) が、1990年に Longacre らによって提唱されて以来、多くの報告がなされている。しかし、SAの診断基準や、過形成ポリープ ( HP ) や腺管腺腫 ( TA ) との関係、組織発生、癌化率など解決すべき問題が多い。今回われわれは SA, HP, TA の増殖能を中心に解析し、さらに SA の組織発生について検討した。
【対象と方法】内視鏡的切除された SA, 38病変、HP, 26病変、TA, 20病変について検討した。免疫染色には Ki-67, p53, CEA, pS2 の抗体を用い、細胞活性の検討には AgNOR 染色を施した。Ki-67 陽性率、AgNORドット数については病変を表層から深層まで3等分し、各部での値を比較検討した。
【結果】Ki-67陽性率は HP < SA < TA で腺管腺腫が高値を示した。部位別の検討では、病変の上1/3では HP < SA < TA、中1/3では HP < SA < TA、下1/3では TA < SA < HP であった。AgNOR については、全ての部位で HP < SA < TA の傾向が見られた。組織学的に SA では好酸性細胞質、核の極性喪失、微絨毛の発達、粘液顆粒の減少、管腔側細胞質の CEA 陽性像、核の極性喪失部での細胞増殖能の低下などが特徴的な像であった。
【考察】SA は増殖細胞の数と分布から HP と TA の中間に位置する病変である。また形態ならびに機能的に SA は正常大腸粘膜表層上皮に類似した分化を示すことが推測された。