ABSTRACT 2155(P10-4)
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膀胱原発移行上皮癌におけるYB-1発現の免疫組織化学的検討 : 黒岩顕太郎1,古川学2,内藤誠二3,桑野信彦2,恒吉正澄11九大・ 医・2 病理,2九大・ 医・1生化,3九大・ 医・泌)

The expression of Y box-binding protein(YB-1) in bladder transitional cell carcinoma : Immunohistochemical study : Kentarou KUROIWA1, Manabu FURUKAWA2, Seiji NAITO3, Nobuhiko KUWANO2, Masazumi TSUNEYOSHI1 ( 1 2nd. Dept. Pathol., Kyushu Univ. Sch. Med., 2 1st. Dept. Biochem., Kyushu Univ. Sch. Med., 3 Urol., Kyushu Univ. Sch. Med)

【目的】転写因子であるY box-binding protein(YB-1) は細胞増殖,薬剤耐性に関連する遺伝子のプロモ−タ−領域の逆向CCAAT配列に結合し,それらの遺伝子産物の発現を制御している.今回,膀胱移行上皮癌におけるYB-1の発現について免疫組織化学的に検討した.
【材料と方法】シスプラチンを含む術前化学療法後に根治的膀胱全摘術を施行した膀胱原発移行上皮癌25例を対象とした.ホルマリン固定パラフィン包埋標本を用い,九州大学第1生化学教室より供与された抗YB-1抗体を用いた免疫染色を行った.
【結果】正常の移行上皮ではYB-1は細胞質に均一に発現しており,核内の発現は認めなかった. 膀胱癌においてはYB-1の腫瘍細胞の細胞質での発現が正常移行上皮より強い例が17例(17/25, 68%)であった.特に核周囲の細胞質に強い発現を認めた.また腫瘍細胞の核にYB-1の発現を認めた例が10例(10/25, 40%)であった. YB-1の発現を認めた群と認めなかった群で,腫瘍の浸潤度(pT), 脈管浸潤(pV,pL), リンパ節転移の有無(N)等に差を認めなかった.
【まとめ】化学療法後の膀胱原発移行上皮癌では腫瘍細胞の細胞質でYB-1が強く発現しており,さらに核内移行も多く認めた.腫瘍の浸潤度(pT), 脈管浸潤(pV,pL), リンパ節転移の有無(N)等との明らかな相関関係はなかった.今後化学療法未施行例での検討も行い合わせて報告する予定である.