ABSTRACT 2159(P10-5)
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乳管内癌巣に伴う線維性変化:秋山 太1, 坂元吾偉1, 霞 富士雄21癌研・研・乳腺病理,2癌研・乳腺外科)

Fibrous change associated with intraductal carcinoma of the breast: Futoshi AKIYAMA1, Goi SAKAMOTO1, Fujio KASUMI2 (1Dept. Breast Pathol. Cancer Instit., 2Dept. Breast Surg. Cancer Instit. Hosp.)

【はじめに】最近10年間の乳房温存治療の普及に伴い乳癌の診療は大きな変革を遂げたが、乳房温存治療では温存乳房への癌遺残が治療成績を左右する大きな因子である。断端病理診断の精度が重要だが、乳管内癌巣の線維性変化により癌の乳管内進展が一見非連続となり、断端診断に影響を及ぼすことがあるので報告する。【症例】69歳、女性。右乳房の乳癌に対して乳房円状部分切除術を施行。切除標本の全割による病理組織学的検索により、断端近傍に癌細胞はみられないが、癌巣より切除断端にかけて乳管を置き換えるような円形、楕円形の線維性変化がみられた。断端癌陰性疑いの病理診断で経過観察されたが、5ヶ月後に手術瘢痕近傍に乳癌が確認され乳房切除術を施行。乳房切除標本にも乳癌と前回の手術瘢痕との間に同様の線維性変化がみられた。異型が強い乳管内癌巣の周囲には硝子化を伴う線維性変化があり、その周囲にはリンパ球浸潤を伴っていた。この変化には軽度のものから乳管内癌巣がまさに線維組織に置換されるものまで様々な段階があり、線維性変化は元来は乳管内癌巣であったと推測するに難くない。今回の乳癌は癌遺残による温存乳房内再発癌と判断した。【おわりに】乳房温存治療の断端診断に際しては、多発癌か否かの診断にも関わる乳管内癌巣の線維性変化に留意することが大切であると考えられた。