ABSTRACT 2216(P12-1)
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形質転換細胞に対して選択的に作用する抗腫瘍物質Oximidineの研究:早川洋一、新家一男、瀬戸治男 (東大・分生研)

Studies on Oximidines, New Antitumor Antibiotics with Selective Activity against Transformed Cells: Yoichi HAYAKAWA, Kazuo SHIN-YA, Haruo SETO (Inst. Mol. Cell. Biosci., Univ. Tokyo)

【目的】ヒト癌においては多種多様な癌遺伝子の変異が観察されるが、これらの増殖シグナルも最終的にはいくつかの細胞周期制御系に収束すると考えられる。したがって、そのようなシグナル伝達を抑制する物質は、広範囲の癌細胞に対して選択的に増殖を阻害することが期待される。そこで、各種癌遺伝子を導入したラット正常細胞を用いて、形質転換細胞に対して選択的に作用する抗腫瘍物質の探索を試みた。
【結果】土壌分離菌の培養抽出物を対象として探索した結果、Pseudomonas属に属する細菌Q52002株が新規活性物質Oximidine IおよびIIを生産していることを見出した。各種機器分析により、Oximidine IおよびIIは、それぞれC23H24N2O7およびC23H24N2O6のユニークな12員環マクロライドであることが明らかになった。これらの化合物は、v-H-rasあるいはv-src癌遺伝子で形質転換したラット3Y1線維芽細胞の増殖を選択的に抑制し、そのIC50値は9−27 ng/mlであった。一方、Oximidineの正常線維芽細胞に対するIC50は270−510 ng/mlであり、SV40形質転換細胞も同程度の低感受性を示した。また、フローサイトメトリーによる解析の結果、Oximidineの形質転換細胞に対する増殖阻害活性は、細胞周期のG1停止に由来することが明らかとなった。