ABSTRACT 2263(P12-5)
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大腸癌細胞株を用いた5FUの増殖抑制効果に関する検討:徳永えり子1,織田信弥1,沖英次1,掛地吉弘2,前原喜彦1,杉町圭蔵 1、2(1九大・医・腫瘍センター,2外)

Difference of growth inhibition by 5FU among human colorectal carcinoma cell lines : Eriko TOKUNAGA1,Shinya Oda1,Eiji OKI1,Yoshihiro Kakeji2,Yoshihiko MAEHARA1,Keizo SUGIMACHI1、2 (1Cancer Center,2Dept. Surg.II, Med.,Kyushu.Univ.)

【はじめに】5FUの作用機序は主にヌクレオチド代謝上重要な酵素であるThymidylate synthase(TS)活性を阻害することにあるとされているが、その増殖抑制効果の詳細な機序は明らかでない。ヒト正常線維芽細胞株MRC5を5FUで処理すると細胞数の減少とS期細胞の消失がみられるのに対し、大腸癌細胞株DLD1(p53 mutant)では細胞数は減少せず、S期細胞の著明な蓄積がみられることを前回報告した。5FUの増殖抑制効果に関与する因子を明らかにする目的で、今回さらにSW620(p53 mutant)、LoVo(p53 wt.)の2株を加え検討した。【方法】対数増殖期にある細胞を5FUで処理し、生細胞数を計測し、細胞周期各相の割合をFACSにて、TSをWestern blotting にて解析した。【結果】各細胞とも濃度依存性に増殖抑制効果を認めたが、20microMでは、DLD1とLoVoでは細胞数は徐々に増加した。DLD1ではS期細胞の蓄積がみられたのに対し、LoVoではS期細胞の消失がみられた。SW620は極めて緩徐な増殖を示したがDLD1と同様S期細胞の蓄積を認めた。5FU20microM投与後にはどの細胞株でもTS活性は著明に抑制されていた。【考察】TS活性が十分抑制されている状態でも細胞株間で増殖抑制効果は異なっていた。p53 statusはS期遅延の有無には関与していると考えられたが、LoVoのように野生型p53をもつものでも増殖抑制効果が低い細胞株が認められた。従って、5FUの増殖抑制効果を左右する他の因子の存在が考えられ、現在DNA障害度やアポトーシス誘導能を中心に解析を進めている。