ABSTRACT 2289(P12-8)
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神経芽腫の分化誘導系におけるスタウロスポリンのAキナーゼ応答ヘの作用:佐々木一樹, 丸山宏二, 塚田俊彦, 山口 建(国立がんセ・研・細胞増殖因子)

Staurosporine treatment does not inhibit cAMP-mediated PKA activity in neuroblastoma cells: Kazuki SASAKI, Kouji MARUYAMA, Toshihiko TSUKADA, Ken YAMAGUCHI (Growth Factor Div., Natl. Canc. Ctr. Res. Inst.)

【目的】蛋白質リン酸化酵素阻害およびアポトーシス誘導作用が知られるスタウロスポリン(SSP) は、cAMP を上昇させる薬物との併用で、ヒト神経芽腫培養株を分化誘導し、cAMP で誘導されるペプチドホルモン・神経伝達物質合成酵素の発現を亢進させる。 SSP の作用機序を明らかにするために、cAMP シグナリングに関わる代表的な分子に対する SSP の効果を検討した。【結果】72時間刺激後の細胞抽出液中のAキナーゼの活性を測定すると、cAMP を上昇させる薬物単独で処理された細胞ではその活性が低下しているが、 SSP 存在下で培養された細胞では活性が有意に維持されていた。いずれの場合も cAMP 濃度は刺激前と同様なレヴェルにまで低下していた。Aキナーゼの触媒サブユニットは量的に変化しなかったが、調節サブユニットは、併用処理された細胞では有意に減少していた。また、 CREB は cAMP 上昇によって一過性にリン酸化を受けるが、SSP は経時的および量的に影響を与えなかった。【考察および結論】SSP で処理された細胞では、Aキナーゼ活性は抑制されておらず、SSP による、cAMP 刺激後の酵素活性の脱感作を抑制する機序の存在が示唆された。低濃度の cAMP によるAキナーゼの持続的な活性維持に、調節サブユニット量の相対的な減少が関与する事は、長期記憶モデルであるアメフラシの神経細胞で明らかになっており、SSP とcAMP の併用による分化誘導現象との類似性が示唆された。また、SSP による cAMP を介する応答の促進には CREB 以外の転写因子の関与が推定された。