ABSTRACT 2291(P12-8)
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p21遺伝子導入による分化/老化誘導を作用機構とした癌に対する分子療法:門脇嘉彦, 藤原俊義, 片岡正文, 西崎正彦, 深澤拓也, 日伝晶夫, 田中紀章(岡山大・医・一外)

Differentiation/senescence-directed molecular therapy for human cancer by a recombinant adenovirus expressing the p21/sdi1 gene: Yoshihiko KADOWAKI, Toshiyoshi FUJIWARA, Masafumi KATAOKA, Masahiko NISHIZAKI, Takuya FUKAZAWA, Akio HIZUTA, Noriaki TANAKA (1st.Dept.of Surgery., Okayama Univ.Med.Sch.)

(目的)癌抑制遺伝子p53により誘導されるp21が細胞周期におけるサイクリン依存性キナーゼ(Cdk)の活性を阻害するとともに、細胞の分化/老化にも関与していることが明らかになった。p21遺伝子導入でimmortal stateを獲得した細胞を分化誘導し、増殖能の永久的潜在化による抗腫瘍効果を検討した。
(方法)ヒト癌細胞(H1299, DLD-1, Saos2, TE-1, TE13)にアデノウイルスベクターでp21遺伝子を導入し、分化/老化の誘導を観察した。
(結果)G1周期での停止がみられ、細胞の膨化や扁平化などの分化現象が観察された。また、老化のマーカーであるβ-galactosidase活性が陽性となり、いくつかの細胞株ではtelomerase活性の減弱が認められた。RAR-βの発現レベルは細胞により異なっており、retinoic acidへの反応性もさまざまであったが、p21遺伝子導入によりすべての癌細胞で分化/老化誘導が観察された。
(考察)固形癌に対する分化誘導療法が一定の評価が得られていない今、p21遺伝子導入により分化誘導剤のシグナル伝達をバイパスする分子療法は臨床的にも応用可能と考える。