ABSTRACT 2302(P12-9)
肺癌患者におけるエトポシド(VP16)の体内動態:美濃興三1,和田育男2,磯部宏3,田中克彦4,中林武仁5,武田武夫4,(1国立札幌病・薬剤,2北大歯付属病・薬剤,3国立札幌病・呼吸器,4国立札幌病・臨研,5国立函館病・呼吸器,)
Pharmacokinetics of etoposido(VP-16) in lung cancer patients: Kouzou MINO1,Ikuo WADA2,Hiroshi ISOBE3,Katuhiko TANAKA4,Takehito NAKABAYASI5,Takeo TAKEDA4,(1Dept. Pharmacy, Sapporo Natl. Hosp. , 2Dept. Pharmacy, Hokkaido University Dental Hosp. , 3Dept. Resp.Dis. , Sapporo Natl. Hosp. , 4Dept. Clin. Res. , Sapporo Natl.Hosp. , 5Dept.Resp. Dis. , Hakodate Natl. Hosp. ,
[目的]癌化学療法は腫瘍細胞と正常細胞のわずかな差を利用して行われるため、抗癌剤の殺細胞効果が正常細胞にもおよび重篤な副作用をまねく場合がある。安全かつ有効な化学療法を行うためには、患者個々人に対する投与方法・投与量の最適化が必要不可欠であり、抗癌剤の体内動態について詳細な検討が必要とされる。我々はエトポシド(VP16)の臨床応用可能な体液中濃度の測定法を開発して、その体内動態の評価・検討を進めてきた。[方法・結果]同意の得られた肺癌患者から経時的に採血、採尿、胸水の採取を行い、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、VP16の体内動態の評価をおこなった。腫瘍部位への薬物の移行性は、抗腫瘍効果の向上・副作用の軽減の上で重要である。VP16は、静脈内投与後、胸水中に良好に移行して血中よりも高い濃度に保たれる傾向が観察された。また、十分に説明し同意の得られた上で胸腔内投与を行った症例では、胸腔内に持続する傾向を示し、製剤の刺激性等の問題が残されているが、局所投与の有用性についての可能性が示唆された。さらに、蓄積された各症例のVP16の体内動態の比較から、殺細胞効果の高い未変化体の尿中排泄に大きく個人差があることが観察され、膀胱癌等への投与においては処方検討の必要性が示唆された。