ABSTRACT 2303(P12-10)
生存環境が悪い条件下での静止期細胞による制がん剤一次スクリーニング
野田康弘1、川添 豊2 (1日大・薬、2名市大・薬)
Anticancer drug primary screening using cultured resting cells in a depleted medium: Yasuhiro NODA1, Yutaka KAWAZOE2 (1Col. of Phar. , Nihon Univ., 2 Fac. of Phar., Sci., Nagoya City Univ. )
【目的】固型がんは脈管系に乏しく、酸素および栄養の供給が不足し老廃物が蓄積するため、細胞の生存環境が悪くなっていることが知られている。また、その内部の細胞は低酸素、低pH、低栄養条件下にある静止期細胞で放射線や制がん剤に対する感受性が低下していることが立証されている。演者らは、固型がん根治のためには、増殖期がん細胞だけでなくこれらの生存環境の悪い静止期がん細胞をも死滅させることが必要であると考えた。
【実験】RPMI1640 (10% FBS)で3日間培養した静止期L1210細胞に培地交換しないで薬物を加え、2日後、XTT法により細胞生存率を測定し、IC50値を求めた。
【結果】3日間培養した細胞は、静止期、低pH、低栄養で一部アポトーシスの誘導が見られ、固型がん内部の細胞との類似性が認められた。スクリーニングをした化合物群の中でtriterpeneの一種betulinic acidに生存環境の悪い静止期細胞に対する特異的な細胞毒性が見られた。増殖期細胞に対する効果に比べ175倍以上も強い活性であった。また、マウス皮下移植Ehrlich固型がんに対しては5FUとの併用(i.p.)で著しい増殖抑制効果があった。