ABSTRACT 2392(P12-15)
疎水性制癌剤KRN5500のLiposome封入体の制癌効果:濱口哲弥1,松村保広1,垣添忠生2,丸山一雄3(国立がんセ・中央病・1内,2病院長,3帝京大学・薬)
Antitumor activity of KRN5500 encapsulated in sterically stabilized liposomes : Tetsuya HAMAGUCHI1, Yasuhiro MATSUMURA1, Tadao KAKIZOE2, Kazuo MARUYAMA3, (1Dept. Int. Med., 2Director, National Cancer Center Hospital., 3Dept. Pharmaceutics, Teikyo Univ.)
【目的】蛋白合成阻害作用を主な機序に有する新規制癌剤KRN5500(KRN)は水に難溶であるため、生体に投与するには有機溶媒に無理やり溶解する必要がある。しかし有機溶媒を用いることにより、血管炎や肝障害などの有害事象が動物モデルで認められているため、現行の臨床第一相試験では中心静脈より投与されている。今回、この有機溶媒を用いることなく静注できる剤型にするために、Liposome封入KRN5500(KRN/L)を作成し、その in vitro での効果を検討した。【方法】(1)KRNは高圧ホモジナイザーを使用し、Liposomeに封入した。(2)ヒト胃癌、大腸癌、計10種の細胞株を継代培養し、KRNおよびKRN/Lを24,48,72時間反応させ、殺細胞効果をMTT assayを用いて比較検討した。【結果】(1)KRNは、約50μg/mg lipid の割合でLiposomeに封入された。(2)72時間反応におけるKRNとKRN/Lの各IC50値(μM)は、胃癌細胞株MKN-28で0.045,0.024、MKN-45で0.019,0.019、MKN-74で0.065,0.079、TMK-1で<0.01,<0.01、KATOIIIでは<0.01,<0.01、大腸癌細胞株Colon-201で0.050,0.070、Colon-320で0.060,0.070、DLD-1で、HT-29で0.070,0.070、LOVOでは0.82,0.56であり、ほぼ同様の殺細胞効果を認めることができた。以上のことから、Liposome封入体を用いることにより、KRNの殺細胞効果を損なうことなしに、より安全に生体へ投与することが期待できるものと考えられた。現在、これらのin vivoでの効果を検討中である。