ABSTRACT 2424(P13-1)
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カンジダ細胞由来の精製膜抗原の癌転移抑制:水谷滋利,斉藤英晴,竹迫一任,加藤郁之進(宝酒造バイオ研)

Anti-metastatic effect of Purified Candida Membrane Antigen : Shigetoshi MIZUTANI, Kazutoh TAKESAKO, Ikunoshin KATO (Biotechnol. Res. Lab., Takara shuzo Co.,Ltd.)

【目的】カンジダ菌(Candida albicans)は、ヒトの常在菌であり、ほとんどのヒトがC.albicans由来の成分に感作されている。我々はC.albicansより精製した膜画分がTh1 typeの免疫を活性化し、真菌感染に対し感染防御を誘導できることを報告してきた。今回、この膜抗原の癌転移抑制作用について検討した。
【方法と結果】(1)癌転移抑制作用:C57BL/6 (7w, ♀)に膜抗原20μg protein/mouseを等量のIFAと1週間隔で2回、皮下に免疫した。2回目の免疫の7日後に転移性腫瘍細胞B16,EL4あるいはLewis lung carcinoma(LLC)を尾静脈より移植した。膜抗原10μg protein/mouseを静脈内に腫瘍細胞移植の前後に幾つかのスケジュールで投与した。転移の判定は移植後適当な時にB16は肺への転移結節数をカウントし、EL4は肝臓、LLCは肺への転移を、臓器重量を測定することにより判定した。その結果、B16, EL4およびLLCの転移は膜抗原の静脈内投与の治療により有意に抑制された。(2)エフェクター細胞の解析:CD4, CD8, IFN-γに対するmAbを用い、各々を除去し転移抑制活性を測定した。その結果、anti-IFN-γmAbを投与することにより転移抑制は消失した。また膜抗原で免疫したマウスに同抗原を投与し1日後の血清中のIFN-γ濃度をELISA法で測定したところ有意に上昇していた。(3)ヒトPBLの膜抗原への反応性:健常人15人のPBLに膜抗原を反応させ、IFN-γの産生量を測定したところ、ほぼすべての人にIFN-γ産生がみられた。
【考察】ヒトと同様にC.albicans抗原を感作したマウスを用いてC.albicans由来の膜抗原が癌転移抑制作用を有すること、この転移抑制活性には、IFN-γが関与していることを明かにした。ヒトPBLがカンジダ膜抗原に反応しIFN-γを産生したことより、この膜抗原を癌の転移抑制剤として使用できる可能性が示唆された。
(会員外共同研究者:井上利明、倉沢真洋)