ABSTRACT 2507(P15-3)
穿刺吸引遺伝子診断法 (Aspiration Biopsy - RT- PCR, ABRP)による甲状腺乳頭癌,未分化癌の術前遺伝子診断-手術例50例による検討 : 高野 徹1,宮内昭2,網野 信行1 (1阪大・医・臨床検査診断学,2隈病院)
Preoperative Gene Diagnosis of Thyroid Papillary and Anaplastic Carcinomas by Aspiration Biopsy-RT-PCR: Toru TAKANO1,Akira MIYAUCHI2,Nobuyuki AMINO1 (1Department of Laboratory Medicine,Osaka University Medical School, 2Kuma Hospital)
目的:甲状腺腫瘍の術前診断は主に穿刺吸引細胞診によっているがより客観的で正確な遺伝子診断法の確立が望まれている.我々はFNABで細胞診用の標本を作成した後の穿刺針の中に残っている腫瘍細胞よりRNAを抽出することにより, 患者に余分な侵襲を与えること無く遺伝子解析する方法を確立し (ABRP),さらにoncofetal fibronectin (onfFN) mRNAが甲状腺乳頭癌と未分化癌に極めて限定的に発現していることを発見した.そこで onfFNmRNAをターゲットとしたABRPによるこれらの腫瘍の術前遺伝子診断の効率を手術例50例について検討した.
方法と結果:1)超音波検査で悪性が疑われる155例からの177検体についてABRPにてonfFN mRNAを検出する遺伝子診断を行い,同じ穿刺検体の細胞診の結果と比較した.細胞診で乳頭癌,未分化癌と診断された検体の94.6%が遺伝子診断陽性であったのに対し,それ以外の組織と判定された検体で陽性だったものは3.7%であった.
2)このうち50例が現在までに手術を受け,病理診断との比較ができた.感度, 特異性, 正診率はそれぞれ96.9%, 100%, 97.9%であった.結語:ABRPは操作が簡便,迅速さらに低コストであり,感度,特異性とも専門病理医のそれに匹敵するものである.乳頭癌,未分化癌のファ−ストスクリ−ニングとしてルーチン化が可能であると同時に,適当な標的遺伝子が存在する場合は甲状腺以外の穿刺可能な癌の術前診断にも応用できるものと考える.