ABSTRACT 2508(P15-3)
組織特異的mRNAを標的とした末梢血RT-PCRによる癌の早期診断:石川智義1、柏木浩暢1、相吉悠治2、三輪正直1、内田和彦1(1筑波大・医・基礎、 2臨床・外科)
Early stage diagnosis of cancer using peripheral blood by RT-PCR which detects targeted tissue-specific mRNA in circulating cancer cells:Tomoyoshi ISHIKAWA1, Hironobu KASHIWAGI1, Yuji AIYOSHI2, Masanao MIWA1, Kazuhiko UCHIDA1(1Inst.Basic Med.Sci., 2 Inst.Clinical Med., Univ. Tsukuba)
【目的】我々は、前回の本学会において甲状腺癌で末梢血を用いたRT-PCR法で組織特異性の極めて高い遺伝子の発現を検出する方法を開発し、この方法が進行癌のみならず早期癌に対しても有用であることを報告した。今回、組織特異的、癌特異的とされる遺伝子の組織特異性を再検討し、また、定量的RT-PCR法により流血中の甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO) mRNA陽性細胞数を測定し、さらに腫瘍マーカーとの比較を行った。【方法】(1) TPO, 甲状腺刺激ホルモン受容体 (TSHR), サイログロブリン (Tg), 前立腺特異的抗原(PSA) およびαフェトプロテイン (AFP)の組織特異性を検討した。 (2) 甲状腺乳頭癌、Stage I: 6例, Stage II: 3例の手術前の末梢血を用いて、ABI PRISM 7700 Sequence Detection SystemでTPO mRNAのコピー数を測定した。【結果】(1)Tg, TSHR, PSA, AFPには組織特異性はなく、TPOは甲状腺と唾液腺でのみで発現していた。 (2) 定量的RT-PCRでは、末梢血中でTPO mRNAはStage Iの6例中4例(67%), Stage IIの3例中2例(67%)で陽性であり、1.1から2700個TPO mRNA陽性細胞/ml 全血であった。 TPO mRNAのコピー数と血中Tg値(手術例では術前値)、腫瘍径とを比較した結果、TPO mRNAのコピー数と血中Tg 値(手術例では術前値)や腫瘍径との相関は認められなかった。現在、マイクロアレイを用いてより高い組織特異性と癌特異性とを兼ね備えた標的遺伝子を探索している。