ABSTRACT 2549(P15-7)
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ヒトナチュラルキラー細胞株へのIL-2遺伝子導入:長島茂樹(獨協医大・微生物)

Transduction of the IL-2 gene into human natural killer cell lines:Shigeki NAGASHIMA(Dept. of Microbiol., Dokkyo Univ. School of Med.)

[目的]NK細胞の抗腫瘍活性を、IL-2大量全身投与をせずに生体内で増強し、癌免疫療法に用いる手段として、NK細胞へのIL-2遺伝子導入(TR-IL-2)が考えられる。しかし、NK細胞への遺伝子導入は極めて困難とされている。そこで、2種類のNK細胞株にIL-2遺伝子導入を試み、親株との比較検討を行った。
[方法・結果] IL-2 依存性NK-92細胞にはFlow through法で、IL-2非依存性YT 2C2細胞にはウイルス産生パッケージ細胞株との繰り返し共培養で、DFG-hIL-2-Neoベクターを導入した。TR-IL-2細胞は、0.5-1.0 ng/ml/100万細胞の生物学的活性を有するIL-2を分泌し、1000-2000 copies/ngのIL-2 mRNAを発現した。トリチウム-サイミジンの取り込みは、NK-92細胞の親株では培養液中のIL-2濃度に依存性であったが、TR-IL-2細胞ではIL-2に非依存性で、親株よりも有意な増殖が認められた。IL-2受容体各鎖の発現は、TR-IL-2 NK-92細胞ではa, b鎖が、TR-IL-2 YT細胞ではb, g鎖が、親株よりも減少していた。K562、Daudiを標的としたクロム遊離試験では、4時間法では有意差はなかったが、24時間法では有意にTR-IL-2細胞の方が細胞障害性が強かった。胃癌細胞株HRを標的とした細胞障害性試験では、TR-IL-2 NK-92細胞の無処理細胞、パラホルムアルデヒド固定細胞、培養上清いずれとも、親株のそれらよりも有意に強くHRにアポトーシスを誘導した。HRで肝転移を形成させたヌードマウスをNK-92細胞で治療したところ、TR-IL-2細胞投与群の方が親株投与群よりも有意に生存期間が長かった。
[結論]TR-IL-2 NK細胞は、親株よりも抗腫瘍活性と増殖能が増強されていた。このモデルを基礎として、ヒト末梢血より分離したNK細胞にIL-2遺伝子を導入できる可能性、および癌免疫療法への臨床応用の可能性が示唆された。