ABSTRACT 2560(P15-7)
CEA特異的scFv抗体とCD3-zeta鎖の遺伝子からなるキメラ遺伝子導入によるT細胞の癌細胞への効果的集積法の検討:富田能弘, 荒川文子, 山本貴文, 別府理智子, 黒木求, 黒木政秀(福岡大・医・1生化)
Specific targeting of T cells through a chimeric gene consisting of an anti-CEA antibody variable region and the CD3-zeta chain: Yoshihiro TOMITA, Fumiko ARAKAWA, Takafumi YAMAMOTO, Richiko BEPPU, Motomu KUROKI and Masahide KUROKI (1st Dept. of Biochem., Sch. of Med., Fukuoka Univ.)
【目的】サイトカインなどの遺伝子をT細胞に導入して行う癌の免疫遺伝子療法の問題点の一つは,遺伝子導入T細胞が目的の癌組織へ確実に再集積されないことである.今回我々は,腫瘍関連抗原CEAを標的とし,これに特異的な抗体を遺伝子レベルで膜結合型に操作してT細胞に導入し,T細胞をより効果的に癌細胞に集積させることを検討した.
【方法】抗CEA抗体F11-39のVHとVL領域遺伝子をlinkerで結合してscFv gene を作製し,CD3-zeta chainの遺伝子を連結してretrovector pLXSNに組み込んでpLscFv-zetaとした.これをT細胞に導入し,抗CEA scFv抗体の発現をflow cytometry で確認するとともに,このT細胞のCEA産生癌細胞に対する標的親和性などを検討した.
【結果・考察】まず,ビオチン化CEAを利用したflow cytometry で,pLscFv-zeta導入T細胞の細胞表面に抗CEA scFv 抗体が発現していることを確認した.次に,pLscFv-zeta導入T細胞が癌細胞を標的として集積するかどうかをイン・ビトロで調べた結果,CEA 産生樹立癌細胞の周りにpLscFv-zeta導入T細胞が集積してロゼットを形成することが観察され,T細胞に発現した抗CEA scFv 抗体が癌細胞へ向けてのレーダーの役割を果たして効率良くT細胞を癌細胞の周囲に集めることが証明された. 今後サイトカイン遺伝子導入などとの併用も考えられ,効果的な癌の遺伝子治療へ道を開くものと期待される.