ABSTRACT 2591(P17-1)
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肺癌患者のリンパ球PAH-DNA付加体量:
清原千香子1, 市場正良2, 中西洋一3, 犬塚悟4, 原信之3, 廣畑富雄5  (1九大・医・公衛, 佐賀医大・地保, 3九大・医・胸研, 4国立療養所南福岡病院, 5中村学園大)

The levels of PAH-DNA addcuts in lymphocytes among lung cancer patients: Chikako KIYOHARA1, Masayoshi ICHIBA2, Yoichi NAKANISHI3, Satoru INUTSUKA4, Nobuyuki HARA3 and Tomio HIROHATA5 (1Dept. Pub. Hlth., Sch. Med., Kyushu Univ., 2Dept Community Hlth Sci., Saga Med. Sch., 3Res. Inst. Dis. Chest, Sch. Med., Kyushu Univ., 4The National Minami Fukuoka Chest Hosp., 5Nakamura Gakuen College)

【目的】肺癌発生にはタバコ煙暴露による芳香族炭化水素(PAHs)のDNAへの結合が深く関与していると考えられる。そこで肺癌患者と健常者のPAH-DNA付加体量を比較した。【方法】健常者50名と肺癌患者42名について、PAH-DNA付加体量(ポストラベル法)、CYP1A1遺伝子多型とGSTM1遺伝子多型および付加体生成に関与する芳香族炭化水素水酸化酵素(AHH)活性を測定した。【結果および考察】喫煙、性、年齢、季節を補正すると、1億ヌクレオチド当たりのPAH-DNA付加体量は健常者(1.07)が肺癌患者(0.75)に較べて有意に高値を、AHH誘導性(誘導AHH活性/非誘導AHH活性)は健常者(4.1)が肺癌患者(8.8)に較べて有意に低値を示した。健常者ではMspI多型の(A+B)型でかつGSTM1欠損型の場合に最も付加体量が多かった。また、リンパ球AHH誘導性とリンパ球付加体生成量の間には有意な正の相関は認められなかった。一方、肺癌患者では喫煙関連の組織型が腺癌に較べて付加体量が多い傾向にあった。肺癌患者のAHH誘導性は高いので付加体がより生成されやすいと考えられるが、我々の研究で逆の結果となった理由は、リンパ球の付加体は過去(1年以上)の暴露は反映しないため、新規発見の肺癌患者でもなんらかの症状のため喫煙量が症状発現以前よりも減少したためと考えられる。付加体生成量の多寡は付加体が生成されやすいか、除去されにくい、あるいはその両方によって決まるので、今後DNA修復酵素(除去)なども考慮する必要があると考える。