ABSTRACT 2592(P17-1)
変異型ALDH2遺伝子型における習慣的飲酒によるアセトアルデヒドーヘモグロビン付加体の蓄積:竹下達也,森本兼曩(阪大・医・環境医学)
Accumulation of hemoglobin-associated acetaldehyde by habitual alcohol drinking in the mutant ALDH2 genotype: Tatsuya TAKESHITA, Kanehisa MORIMOTO (Dept.Hyg.Prev.Med., Osaka Univ.Sch.Med.)
【目的】我々は、日本人男性集団におけるアセトアルデヒド(AcH) の可逆的ヘモグロビン付加体(以下HbAA)量への ALDH2遺伝子型の影響を検討し、とくにALDH2*1/*2型では、HbAA量が直前の飲酒量とよく相関することを報告してきた。今回は例数を増やし、直前の飲酒量とともに習慣的飲酒量の影響をも合わせて解析を行った。また習慣的飲酒によるHbAA量の変化をsimulateするために、健康なALDH2*1/*2型の男性3名の協力を得て飲酒(ethanol換算0.4ml/kg) を連日7日間続けた後12日間禁酒して、HbAA量の変化の解析を行った。【方法】Petersonら(1987)の方法に従い、前処理後HPLCおよび蛍光検出器を用いてHbAA量の分析を行った。【結果】男性集団の解析において、ALDH2*1/*1型、ALDH2*1/*2型ともに、直前の飲酒量と良い相関がみられた。とくにALDH2*1/*2型では、傾きが約5倍急であった。多重ロジスティック回帰において、ALDH2*1/*2型では、直前の飲酒量と同程度に習慣的飲酒量が有意な相関(p<0.001) を示した。このことは、習慣的飲酒によりHbAAが徐々に蓄積することを示唆している。実際にALDH2*1/*2型の男性3名に連日7日間の飲酒負荷を行った所、HbAA量は飲酒中は上昇を続け、8日目に205.6±17.7nM/gに達した(飲酒前122.1±2.7に対してp<0.05)。また飲酒中止後数日間に、HbAA量が次第に減少してほぼbaseline値に復した。【考察・結論】 HbAA量は、ALDH2遺伝子型を問わず、最近の飲酒量の良い指標となる。ALDH2*1/*2型では、習慣的飲酒の影響も加算される。またALDH2*1/*2型では連日飲酒負荷によりHbAAが蓄積する。アセトアルデヒドのヒト発がんへの関与が示唆されてきているが、HbAA量は飲酒関連がんの良いバイオマーカーとして期待される。