ABSTRACT 3(1-1)
ラットにおける発がん性ヘテロサイクリックアミンPhIPとDNA付加体形成の臓器標的性と用量相関の解析:上原宣昭1、國元武彦1、前田満和1、朴哲範1、福島昭治2、津田洋幸1、(1国立がんセ研・化療、2大阪市大・医・1 病)
Analysis of dose-related DNA adducts formation in rats treated with PhIP by modified 32P postlabeling analysis: Nobuaki UEHARA1, Takehiko KUNIMOTO1, Mitsuaki MAEDA1, Cheol Beom PARK1, Shoji FUKUSHIMA2, ,Hiroyuki TSUDA1, (1Exp. Pathol. & Chemother. Div. National Cancer Ctr. Res. Inst. ,21st. Dept. Pathol., Osaka City Univ. Med.Sch.,)
【目的】環境中の発がん物質曝露による低レベルにおける発がんリスクを検討する目的で、PhIPを0.001 ppmから400 ppmの用量にて投与した場合のDNA付加体の形成の程度を大腸と前立腺において、改良したポストラベル法により解析した。【方法】3週齢F344雄ラットを用い、第1群から第8群まではPhIPをそれぞれ400, 100, 50, 10, 1, 0.1, 0.01, 0.001 ppmを混餌投与し、第9群は無処置とした。投与開始4週と16週で屠殺し(n=5)、大腸と前立腺のDNA-PhIP付加体量を測定し、発がん標的臓器における付加体量の用量相関の解析を試みた。【結果】1) 低レベルでのDNA-PhIP付加体量を測定した結果、4週目では、検出限界用量は10 ppmであり、それ以上の用量では急峻に立ち上がり、明瞭な一次の用量依存性を示した。2) 16週で、大腸では全用量ともに4週の平均量の1 / 28に、前立腺では100 ppmでは変化なく400 ppmで約1/4に減少した。3) 前立腺では、16 週で100 ppm〜400 ppmの高用量域では用量相関はみられずプラトーに近いプロフィールを示した。【結論】1) 1 ppm までの低用量域での付加体形成には域値の存在が示唆された。2) 10 ppm以上では明瞭な用量相関がみられたが、前立腺では高用量で平坦化した。3) 16 週での大腸における付加体量の減少は、PhIP の毒作用による細胞回転の亢進または薬物代謝酵素の誘導が考えられた。今後前がん病変の発生との相関を明らかにする予定である。(文部省科研費、科技庁戦略的基礎研究推進事業、がん克服新10カ年戦略研究事業)