ABSTRACT 4(1-1)
乳癌におけるCatechol-O-methyltransferaseの遺伝子多型と酸化的DNA傷害の関係:松井哲1,池田正2,榎本耕治2,渡辺守1,日比紀文1,細田加那江3,中島宏3,大前和幸3,北島政樹2(1慶応がんセ,2慶大・外,3慶大・公衛)
Genotypes of catechol-O-methyltransferase and oxidative DNA damage in patients with breast cancer: Akira MATSUI1, Tadashi IKEDA2, Kohji ENOMOTO2, Mamoru WATANABE1, Toshifumi HIBI1, Kanae HOSODA3,Hiroshi NAKASHIMA3, Kazuyuki OOMAE3, Masaki KITAJIMA2 (1Keio Cancer Ctr., 2Dept. of Surg., Keio Univ., 3Dept. of Hygiene, Keio Univ.)
【緒言】estrogen代謝産物による乳癌の発癌機構としてreceptor を介したホルモン作用以外にcatechol estrogenによる直接的なDNA傷害が注目されている。Catechol-O-methyltransferase (COMT)はそのメチル化を行うphase2代謝酵素で活性の異なるvariantが存在し、発癌に関与している可能性がある。今回はCOMTのgenotypeと乳癌組織の酸化的DNA傷害の関係を調べた。
【方法】乳癌組織より非酸化的にDNAを抽出し、COMTのgenotypeはPCR-based RFLP法にて決定した。またDNA傷害の指標として8-hyroxydeoxyguanosine(8-OHdG)を測定した。抽出したDNAをnuclease, alkaline phosphataseで処理し、HPLC-ECDを用いて8-OHdGを測定した。
【結果】乳癌患者ではCOMTの低活性type(COMTLL)が15.4%、中間type(COMTHL)が25.6%高活性type(COMTHH)が56.2%であった。各typeの間で8-OHdGレベルに差は見られなかった。しかし、COMTLL typeではリンパ節転移を有する進行例が多く見られた。
【考察】COMTのgenotypeにより8-OHdGには差はないが、低活性typeに進行例が多くcatechol estrogenによるDNA傷害が悪性化に関与した可能性もあると考えられた。