ABSTRACT 6(1-1)
ニトロソプロリンと近紫外光の共同作用により誘起される突然変異,DNA鎖切断および酸化的DNA損傷:有元 (小林) 佐賀惠,蓬莱友美,早津彦哉(岡山大・薬)
Mutation, DNA strand cleavage and oxidative damage caused by N-nitrosoproline with UVA irradiation: Sakae ARIMOTO-KOBAYASHI, Yumi HORAI, Hikoya HAYATSU (Faculty of Pharmaceutical Sciences, Okayama University)
[目的] アミノ酸の一つであるプロリンは生体内で亜硝酸と反応してニトロソプロリン(NPRO)を生成することが知られ,正常人の尿中からも検出されている。NPROは代謝酵素による活性化を受けないため,他の発癌性ニトロサミン類とは異なり,非発癌性かつ非変異原性とされてきた。しかし,我々はニトロソジメチルアミンなどのニトロサミン類が太陽光や近紫外光照射により活性化されることを見いだしている。今回,NPROが近紫外光により活性化され,変異原性・DNA傷害性を示すようになるのではないかと考え,研究したので報告する。[結果・考察] NPROは近紫外光照射によりサルモネラ菌TA1535に突然変異を誘起することが分かった。また,NPRO存在下,近紫外光照射した二本鎖スーパーコイル状DNAに一本鎖切断が生じた。さらに,NPRO+近紫外光処理した子牛胸腺DNAにおける酸化的DNA損傷を検出したところ,誤対合により突然変異の原因となることが知られている8-ハイドロキシグアニン及び5-ハイドロキシシトシンが生じていた。従って,NPROは内在性遺伝子損傷性物質の可能性があることが分かった。