ABSTRACT 10(1-1)
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ウクライナ共和国の被爆地域住民の膀胱粘膜における遺伝子異常の検索:森村圭一朗1,山本晋史1,アリーナ・ロマネンコ2,アレクサンダー・ボジアノフ2,李祺家1,魏 民1,桝田周佳1,片桐里美1,鰐淵英機1,福島昭治11大阪市大・医・第一病理,2ウクライナ泌尿器疾患研究所)

Gene alterations in the urinary bladder of people living in radiocontaminated areas of Ukraine : Keiichirou MORIMURA1, Shinji YAMAMOTO1, Alina ROMANENKO2, Alexander VOZIANOV2, Chyi Chia R. LEE1, Min WEI1, Chikayoshi MASUDA1, Satomi KATAGIRI1, Hideki WANIBUCHI1, Shoji FUKUSHIMA1 (11St.Dep.Pathol.,Osaka City Univ. Med. Sch. Osaka, Japan, 2Inst. of Uro. & Nephro. A.M.S. Kief, Ukraine)

チェルノブイリ原発事故の後、放射能汚染地域において過去10年間で膀胱癌の発生頻度が約1.3倍上昇している。その原因として、汚染地域の住民が主として尿中に排泄されるCs137に長期間曝露されていることが考えられる。我々は、前立腺肥大症の診断にて手術を受けたこの地域の患者の膀胱粘膜生検に上皮異形成や上皮内癌が多発していることを見いだした。今回これらの病変部における遺伝子異常の有無を免疫組織学的手法および分子生物学的手法を用いて検索した。汚染地域の患者45例および非汚染地域10例について、抗p53および抗サイクリンD1抗体を用いて免疫組織染色を行った結果、汚染地域ではそれぞれ60%、75%の症例で強い染色性を示したが、非汚染地域においてはごくわずかにのみ陽性所見を認めた。次に汚染地域の患者17例の病変部よりDNAを抽出しPCR-SSCP法にてp53遺伝子変異を検索した結果、約半数に点突然変異を認めた。これより、汚染地域における膀胱癌の発生にはp53およびサイクリンD1遺伝子の異常が深く関与しており、また癌の存在が疑われていない患者の膀胱粘膜から高率に遺伝子変異が確認されたことから、今後この汚染地域の膀胱癌の発生に注意深い観察が必要である。