ABSTRACT 11(1-1)
変異原性物質MXによるラット腺胃発癌の促進: 西川秋佳1、古川文夫1、笠原健一郎1、今沢孝喜1、李 仁善2、木苗直秀3、高橋道人1、広瀬雅雄1、(1国立医衛研・病理、2韓国啓明大・食品加工、3静岡県大・食品栄養)
Promotion of rat glandular stomach carcinogenesis by 3-chloro-4-(dichloromethyl)-5-hydroxy-2(5H)-furanone (MX): Akiyoshi NISHIKAWA1, Fumio FURUKAWA1, Ken-ichiro KASAHARA1, Takayoshi IMAZAWA1, In-Seon LEE2, Naohide KINAE3, Michihito Takahashi1, Masao HIROSE1 (1Div. of Pathol., Natl. Inst. Health Sci., 2Dept. of Food Sci. Tech., Keimyung Univ., 3Lab. of Food Hygiene, Univ. of Shizuoka)
【目的】水道水中の有機塩素系化合物3-chloro-4-(dichloromethyl)-5-hydroxy-2(5H)-furanone (MX)は変異原性を有することが知られていたが、最近ラットにおいてがん原性を示すことが明らかにされた。MXは低pH環境下で安定であることから、今回、腺胃発癌に対する修飾影響について検討した。【方法】6週齢のWistar系雄ラット120匹を6群に分け、第1〜3群(各30匹)には100 ppmのN-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine (MNNG)を飲水投与すると同時に5%の食塩を混餌投与した。8週後から基本食に切り替え、57週間にわたってそれぞれ30(1群)、10(2群)および0(3群) ppmのMXを飲水投与した。第4〜6群(各10匹)にはMNNGと食塩の処置をせずにそれぞれ第1〜3群と同様にMXを同期間投与した。剖検により、胃を含む諸臓器を摘出し、病理組織学的に検索した。【結果】腺胃腺癌の発生頻度および動物当たりの平均個数は、それぞれ第1群29.6%、0.33±0.55個、第2群25.9%、0.25±0.44個、第3群3.8%、0.03±0.19個であり、第3群に比し第1群で有意に増加した。異型過形成の発生頻度も第1群および第2群で有意に増加した。なお、肝内胆管腫瘍および甲状腺濾胞腫瘍の発生がMX投与により増加傾向を示した。【まとめ】MXの長期飲水投与はラット腺胃発癌を促進することが明らかとなった。