ABSTRACT 12(1-1)
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(R)-, (S)-,(R-S)-Glycidols のラットF344に対する発癌性;光学異性体の臓器特異腫瘍形成: 矢野一行1, 片山博雄2 (1埼玉医大・化学,2埼玉医大・医短)

Carcinogenicity of (R)-, (S)-, and (R-S)-glycidols in F344 rats; Organ-specific tumor formation by enantiomeric isomer:Kazuyuki YANO1, Hiroo KATAYAMA2 (1Dept. of Chem., Saitama Medical School, 2 Junior College, Saitama Medical School)

[目的]Glycidol (2,3-epoxy1-1-propanol)は工業的に重要な化学薬品であり, 特にその誘導体は広く使用されている。この化合物の強い発癌作用について新しい知見を得ることを目的に、光学異性体である (R)と(S)- ならびにラセミ体である (R-S)-glycidolsのラットに対する発癌性を検討した。[実験]F344ラット(♀, 8週齢, 15匹を1グループ)に1日1回、週5回金属製ゾンデで経口投与した。この投与は14ヶ月継続し、以降は観察を続け24ヶ月の時点で実験を終了した。[結果と考察]3グループ全体の腫瘍発生率には殆ど差はなかったが、標的臓器は明らかに異なり、主な癌はクリトリス癌と乳癌であった。前者の癌発生率は、(S)-異性体では69.2%、(R)-異性体では28.6%、(R-S)-ラセミ体では50.0%であり、後者に関しては (S)-異性体は7.7%、(R)-異性体は35.7%、(R-S)-ラセミ体は42.9%であった。これら両者の癌については(S)-異性体と(R)-異性体の間で有意義な差が見られた。これらの結果は(S)-異性体にはクリトリスに特異的に癌を形成させる作用のあることを示している。この臓器特異性はクリトリスには(S)-体に特異的に結合するreceptorの存在を示唆し、glycidolの発癌性を考察するときにreceptorを介しての機構も考慮することが必要ではないかと考えられる。