ABSTRACT 14(1-2)
ラット胃でのaberrant crypt foci (ACF)の誘発の試み:渡辺敦光,上坂敏弘,石村美祐,白木克尚,城戸聡一郎,荘司俊益,加藤 修(広島大・原医研・ 環境変異)
A trail of aberrant crypt foci-induction in rat stomach: Hiromitsu WATANABE, Toshihiro UESAKA, Yoshimasa ISHIMURA, Katsuhisa SHIRAKI, Soichiro KIDO, Shuneki SHOJI, Osamu KATOH (Dept. of Environment and Mutation, RIRBM Hiroshima University)
【目的】X線照射で胃に腸上皮化生を誘発したラットにDMHを投与する事により胃に腫瘍が生じる事を我々は報告した(JJCR 87, 433, 1996)。今回は腸上皮化生を誘発したラットにAzoxymethane (AOM)を与える事により胃にACFが誘発されるかを検討した。【材料並びに方法】5週令雄Crj:Donryuラットを用い胃部に10GyのX線を3日間隔2回照射群、2日間隔3回照射群及び非照射群を設けた。X線照射6カ月後にAOM 15mg/Kg体重を1週間間隔で3回投与し、2週間後に動物を屠殺し、胃粘膜のアルカリフォスファターゼ(ALP)活性及びACFの測定後病理検索を行った。【結果】体重は10GyX3回群及び10GyX3回+AOM群で非照射群に比べて有意に減少した。ALP活性を持つ腸上皮化生は10GyX2回群で16.4個、10GyX3回群で11.5個、非照射群では0.7個あった。組織学的には腸上皮化生の数は夫々9.8個、14.6個及び0.5個であった。AOMを投与するとALP活性を持つ腸上皮化生は10GyX2回群で6.8個、10GyX3回群で11.0個、又組織学的には夫々4.1個、並びに10.3個と減少した。一方X線を照射し、腸上皮化生を持つ胃にはACFを思わせる病変が出現した。更に変性し8ハイドロキシデオキシグアニン抗体で染色される腸上皮化生が認められた。大腸でのACFはほとんどの動物に出現しその数は10GyX2回+AOM群で8.2個、10GyX3回+AOM群で3.6個並びに非照射+AOM群で7.1個であった。【結論】X線で誘発した腸上皮化生数は照射回数では差は認められなかった。誘発された腸上皮化生からAOM処理でACF様の病変が出現した。