ABSTRACT 18(1-2)
加熱分解産物PhIP によるラット前立腺癌の発生と大量テストステロンの促進作用 :崔 林, 高橋 智, 二口充, 今井田克己, 白井智之(名市大・医・第一病理)
Promotion effects of high dose of testosterone in the cooked food derived PhIP-induced rat prostate carcinoma : Lin CUI, Satoru TAKAHASHI, Mitsuru FUTAKUCHI, Katsumi IMAIDA, Tomoyuki SHIRAI (1st Dept.Pathol., Nagoya City Univ. Med. Sch.)
熱分解産物のヘテロサイクリックアミンである2-Amino-1-methyl-6-phenylimidazo [4,5-b] pyridine(PhIP)はラット乳腺、大腸に加えて、前立腺にも発癌性があることを報告してきた。以前我々は前立腺発癌物質のDMABが同様の癌を発生するものの、testosterone propionate(TP)を追投与すると浸潤癌が発生することを見い出している。そこで、今回はPhIPの後にTPを投与し、浸潤癌が発生するかどうかを検討した。[方法]6週齢雄F344ラットを1群20匹として、第1群にはPhIPを400ppmの濃度で20週間混餌投与した。第2群にはPhIP混餌投与後、さらにTPをラットの背部皮下に40週間埋植した。第3、4群はそれぞれ無処置対照群とした。全経過60週で屠殺し、前立腺および精嚢を病理組織学的に検討した。[結果]PhIP単独投与群では前立腺腹葉に異型過形成が15/17(88.2%)、腺癌が11/17(64.7%) に観察され、いずれも対照群の非投与群に比して有意に高い値を示した。前葉と精嚢にも異型過形成がそれぞれ3/17(17.7%)と15/17 (88.2%)に観察された。PhIP投与後TPを追投与群では背側葉に異型過形成が1/9(11.1%)に観察され、また、前葉と精嚢に異型過形成がそれぞれ4/9(44.4%)、8/9(88.9%)に、浸潤癌が1/9(11.1%)、2/9(22.2%)を認められた。[結論]PhIPは短期投与でもDMABと同じくラットの腹葉前立腺癌を高頻度に誘発した。また、TPを追投与によりわずかながら浸潤癌が発生することが確認された。