ABSTRACT 19(1-2)
DMBAラット白血病の染色体異常とN-ras異常:杉山武敏1,逢坂光彦2,3,小網健市3(1滋賀成人セ,2シカゴ 大・血液内科,3京大・医・腫瘍生物)
Chromosomal abnormalities and N-ras mutation in DMBA-induced rat leukemias: Taketoshi SUGIYAMA1, Mituhiko OSAKA2,3, Ken-ichi KOAMI3 (1Shiga Medical Center for Adults, 2Section Hematol.Dept.Med.Univ.Chicago,3Dept. Path.TumorBiol., Graduate Sch.Med.KyotoUniv.)
ラットのDMBA,TMBAによる白血病は主として赤芽球性で,30%は2番染色体(#2trisomy)あるいはその一部の重複(long#2)を特徴とする.一部は2次的と考えられるc-abl,c-Ha-rasの組換えを認める.最近,逢坂らにより,この白血病に特異的なN-ras遺伝子の61番コドンの2番塩基の置換型変異(CAA→CTA)の存在や正常N-rasアリル欠失が示された (Osaka et al Cancer Lett,91,25-31,1995, Osaka etal,Mol.Carcinogen,18,206-212,1997).N-ras遺伝子はLong#2の構造解析から見た 染色体重複部位内にある2q34に存在する(deStoppelaar,1994)ので, 染色体異常はN-rasに関する遺伝子量効果を示すと考えられた.N-rasの特異的変異はDMBA注射48時間後に骨髄の100万細胞に1細胞の割で出来る(Osaka,etal,Mol.Carcinogen,18,126-131,1996)ので,この変異がDMBA発癌の最初の遺伝子変化であり,これに正常アリルの欠失,N-ras変異の重複が加わり,N-ras変異が優位になって白血病発症に至り,さらにc-abl,Ha-ras変異などの異常が加わり悪性度を増すものと推定された.以上,本白血病は発癌剤作用による遺伝子変異,染色体変化を経て発症に至る全過程を示すことの出来るユニークな化学発癌の系であることが判明した.