ABSTRACT 20(1-2)
 一般演題一覧 トップ 


ヒト正常型c-Ha-ras遺伝子導入ラットにおけるMNU誘発乳がんに対する 卵巣摘出および発がん化学予防物質の影響:朝元誠人1,鳥山ー馬場弘靖1,太田智則1,安東輝1,竹下文隆1,鈴木寛規1,寺田雅昭2,津田洋幸1(国立がんセ・研・1化療,2分子腫瘍)

Effects of ovariectomy and d-limonene on MNU - mammary carcinogenesis in human proto c-Ha-ras transgenic rats: Makoto ASAMOTO1, Hiroyasu BABA-TORIYAMA1, Tomonori OTA1, Akira ANDO1, Fumitaka TAKESHITA1, Hiroki SUZUKI1, Masaaki TERADA2, Hiroyuki TSUDA1 (1Exp. Pathol. & Cemother. Div., 2Director, Nat'l Cancer Ctr. Res. Inst.)

【目的】我々の作出したヒト正常型c-Ha-ras遺伝子導入(Tg)ラットにMNUを投与すると8週間の実験期間内にすべてのラットに乳癌が多発するが、通常のラットには腫瘍の発生はほとんどみられないことを報告してきた。今回Tgラットに誘発した乳癌の性質の一端を追究する目的で、卵巣摘出およびras farnesyl transferase inhibitorとしての活性を持ち乳腺発がん抑制作用が報告されているd-limoneneの影響を検索した。【方法】ヒト正常型c-Ha-rasをそれ自身のプロモーター/エンハンサー領域と共にSDラット由来の受精卵に導入し3コピー入ったTgラットを用いた。50日齢のTgおよび野生型ラットにMNU50mg/kg i.v.投与後2日目に卵巣摘除を行なった。また、5% d-limoneneはMNU処置後2日後よりTgおよび野生型ラットに混餌投与した。実験は8週で終了し、乳腺腫瘍の個数、大きさを計測し、病理組織学的検索を行った。【結果】野性型ラットでは卵巣摘除により腫瘍発生は完全に抑制されたが、Tgラットにおいては卵巣摘除の有無による乳腺腫瘍の発生頻度、数、大きさに有意差は全くみられなかった。d-limoneneはTgラットにおいて乳腺腫瘍の発生を有意に抑制した。以上より、ヒト正常型c-Ha-ras遺伝子導入ラットおいて、MNUにより誘発した乳腺発がんは卵巣ホルモン非依存性であり、またras farnesyl transferase inhibitorであるd-limoneneには反応することが明らかとなった。